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右代啓祐が世界陸上に復活出場。
日本陸連も世界陸連もグダグダ?
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by及川彩子
posted2019/09/25 11:30
アジア選手権の優勝は右代啓祐の知名度を日本の外へも大きく上げた。それだけに今回の騒動は気の毒だ。
難民選手枠、1カ国1選手枠の問題。
エリアチャンピオン枠以外でも、国際陸連の決定には首をひねらざるを得ない部分が多い。難民選手枠、また1カ国1選手枠などもそれに該当する。
個人競技の陸上は、参加標準記録を突破した選手がいない国からは1カ国1人出場を認めている。難民の選手も希望すれば出場ができる。これは個人種目ならではの魅力であり、より多くの国で陸上が浸透するチャンスにもなる、というプラス部分を持つ。
一方で彼らがどの種目にエントリーするのか、エントリー締め切り日まで分からないというマイナス点がある。また彼らは基本的にどの種目へのエントリーも認められているが、標準記録には大きく及ばないケースが多い。
例えばドーハ世界陸上では男子5000m出場枠は42。そのうち5人が難民枠から。
彼らの出場する意義は理解できる。しかし5000m標準記録13分22秒50に対して、彼らの持ちタイムは14分台。日本選手が13分22秒72と、標準記録までわずか0秒22で出場枠圏外にいるのを見ると、やはり心がチクリとする。
難民枠、1カ国1選手枠は種目ごとに参加可能人数を決めてほしいと思うのは筆者だけだろうか。彼らにも出場権利がある。彼らも努力している。しかし世界陸上、五輪に出るために努力している選手たちにも納得できる選考をしてほしい。
「選んでもらう立場」の選手たち。
為末大さんがツイッターでつぶやいていたように、今回の右代選手の問題は、選手本人がツイッターで悲痛な叫びをして初めて問題が表面化した。イギリスの選手達の招待出場の却下、またメダル候補のウィリスの欠場問題も同様だった。
SNSで訴えるのは勇気が必要だったはずだ。特にイギリスの選手は陸連から睨まれれば、今後の選考で不利になる可能性もある。しかし彼らにはそれでも声を上げたくなるほどの悔しさがあった。
またウィリスの場合は、出場し、メダルを獲得すればスポンサーからボーナスの可能性もあったはずだ。それぞれの悔しさ、無念さが行間から窺えた。
現状では、選手たちは常に「選んでもらう立場」にあり、上には権限を持った「選ぶ側」、つまり各国陸連、そのさらに上には国際陸連が存在する。最も上の立場の選考要項、選考方法が間違っていれば、すべての歯車が噛み合わなくなる。
選手は駒ではない。彼らは世界で戦うために日々努力し、戦っているアスリートだ。国際陸連、各国陸連は選手の意見や考えに耳を傾け、彼らが輝ける瞬間をお膳立てするべきだ。また来年の東京五輪で同じような問題が起きないように、問題点を洗い出し、再度、新しい選考要項の作成をお願いしたい。