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引退目前の長州力が張り切っている。
宮古島愛と“第2の石井智宏”育成。
posted2019/06/04 17:00
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph by
Gantz Horie
「今日の長州さん、かなり張り切ってましたね」
メインイベント終了後、関係者や報道陣から口々にそんな声が聞かれた。
5月19日、沖縄・JTAドーム宮古島で行われた、プロレス団体フリーダムス主催の「宮古島プロレス祭り2019」。翌月に引退を控えた長州力は、メインイベントの6人タッグマッチに出場。その姿は、異例ずくめだった。
試合では、得意のリキラリアットとサソリ固めをそれぞれ2回ずつ出す奮闘ぶりで杉浦透に勝利。普段の長州なら勝ち名乗りを受けるとすぐにリングを降りて控室に戻るところだが、この日はマイクを握って、宮古島の観客に感謝の意を伝える挨拶を行った。
さらにバックステージに戻ってからの囲みインタビューでは、冗談を飛ばして笑顔でコメントする姿も見られた。
長州にとって宮古島は第2の故郷。
長州の試合後のコメントといえば、有名な「キレちゃいないよ。俺をキレさせたらたいしたもんだ」に代表されるように、ピリピリとした緊張感の中で、ぶっきらぼうに発せられるもの。それが、笑顔で冗談まで飛ばしたのは、長州にとって宮古島大会が特別だった証だろう。
そもそもこの宮古島大会出場は、引退に向けた「ファイナルロード」の中で、故郷の山口県大会とともに、長州自身が出場を望んだもの。ここ10年ほど、プライベートで頻繁に宮古島に訪れている長州にとって、まさに第2の故郷のようになっている特別な場所なのだ。
以前の長州は、サイパン通で有名だった。新日本プロレスの現場監督として辣腕を振るった1990年代は、シリーズオフやビッグマッチの前には必ずサイパンで合宿を張り、真っ黒に日焼けして最高のコンディションを作り上げていたものだ。
今、新日本プロレスで大活躍中の石井智宏が、その飛躍のきっかけとなった長州への“弟子入り”をはたしたのも、サイパン合宿だった。