酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
野球殿堂を球団別で作るという提案。
掛布や桑田の名前を残すためにも。
posted2018/12/16 11:30
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News
毎年1月15日には新たな野球殿堂入りの発表が行われる。野球殿堂は、野球人の最高の栄誉だ。東京ドームの中にある野球殿堂博物館にレリーフ入りのネームプレートが飾られ、永遠にその功績が顕彰される。
今年は新たにプレーヤー表彰で石井一久、アレックス・ラミレス、桧山進次郎、前田智徳、宮本慎也、山﨑武司の6氏が候補に加わった。またエキスパート表彰では掛布雅之、尾花高夫、梨田昌孝の3氏が加わった。彼らも含め、全部で33人の候補から選出される。
殿堂入りは、記者や有識者の投票で決まるが、一定の基準がある。
打者の場合、2000本安打は実質的に必要条件になっている。2000本をクリアしたからと言って殿堂入りするわけではないが、この大台を超えない選手は難しい。これにタイトルやMVPなどの表彰、最多本塁打などの大きな記録があれば、殿堂入りが近づいてくる。最近は日米通算成績も評価される。
この基準で見れば、2000本に達していない桧山進次郎、山崎武司、掛布雅之の3氏は厳しいだろう。
投手の場合、200勝は十分条件だ。投手の分業が進んで、昔のように30勝、40勝と積み重ねる投手が少なくなったからだ。日米通算もありである。さらにセーブ数などで大記録を残した投手も有力になる。ただ新たな候補のうち、石井氏は日米通算で182勝、尾花氏はNPBで112勝。両候補ともに厳しそうだ。
殿堂入りの基準は厳しくてもいい。
さらにその上で、監督として多大な実績を残した野球人は「現役時代との合わせ技」で殿堂入りすることもある。星野仙一(通算146勝)、原辰徳(通算1675安打)の2人などは、監督としての実績も加味されて殿堂入りしたと言えよう。
中には2012年の津田恒実(通算49勝90セーブ)のように、数字以外の要素が加味されて殿堂入りしたと思える例もあるが、殿堂入り表彰には一定の基準があるのだ。
時代によって野球の数字は大きく動いている。そのことは考慮すべきだと思う。投手など200勝をラインにしていれば、今後殿堂入り投手は出てこないことになるかもしれない。ではあるが、殿堂入りの基準はそうやすやすと動かしてはいけないだろう。
特に短期間活躍して消えた選手を殿堂入りさせるような前例は残すべきではないと思う。
MLBでは、史上ただ1人、ワールドシリーズで完全試合を達成(1956年)したヤンキースのドン・ラーセンを殿堂入りさせるかどうかでかなりな論争があったが、通算81勝は、基準に届かずということで、殿堂入りは見送られた。
やはり野球殿堂入りの栄誉は、長く野球界で貢献した野球人に与えたい。保守的かもしれないが、私はそう思う。