Overseas ReportBACK NUMBER
「日本の綺麗なロッカー」騒動とは。
ツイート削除、解任、そして気高さ。
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph bySports Graphic Number
posted2018/07/15 08:00
世界中で話題になったプリシラさんのツイート。現在は削除されている。
スポーツのロッカーが散乱しているのは普通のこと。
ロッカールームが散らかっているのは、ワールドカップだけに限らず、スポーツ現場ではよくある光景だ。怒りにまかせて椅子を蹴ったり、壁を殴ったりする選手を現場で見たことがある。
関係者にとってはそういったことは、良くも悪くも見慣れた光景なので、飲みかけのボトルやゴミが落ちていたり、椅子が床に転がっていても、スタッフたちは黙々と作業をするだけだ。
プリシラさんのツイートにグッときた日本人ももちろん多いはずだ。大会前には監督解任の報が流れ、批判の声も上がった。グループリーグの最終戦のプレーには日本はもちろん世界から疑問の声もあった。
「日本を応援する気がなくなった」
「決勝ラウンドではベルギーを応援する」
そんな言葉もあったが、ベルギー戦での日本の戦いぶり、その後、1枚の写真と言葉を見て、考え方を変えた人は多かったはずだ。
「Integrity(気高さ)」
選手や関係者を含めて日本代表がどういった姿勢でワールドカップに臨んだのか、そして舞台からどう去ったのか垣間見ることができた。
実は守秘義務違反で、彼女は解任されている。
多くの人の心を動かしたプリシラさんのツイートだが、その後、彼女は当該のツイートを削除し、そして大会期間中にも関わらず、任務を解かれている。
「突然、私の冒険は終わりを迎えてしまいました。モスクワに戻り、帰路につきます。FIFA、そしてロシア、関係者の皆さん、素晴らしいトーナメントの一員にさせてくれてありがとうございます」
プリシラさん本人そしてFIFAに問い合わせたものの返答はないが、おそらくボランティアを含む大会関係者が遵守すべき「守秘義務」への違反が問題になったのだろうと思われる。
今大会の組織委員会で働くロシア人スタッフによると、大会前にそういった規則、守秘義務などにサインをさせられたとのこと。そしてこのツイートだけではなく、SNS使用や写真撮影などで問題が起きていることも教えてくれた。
確かに関係者しか立ち入りができない場所での情報を関係者やボランティアが次々とSNS上などで上げてしまったら収拾がつかないことになるし、今回のような「いいニュース」だけではなく、ネガティブなニュースが出ないとも限らないため、守秘義務などの規則があるのは当然で、雇用された側が遵守しなければならない。