スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
FA市場の遅滞とダルビッシュの行方。
1億5000万ドル級の大型契約はあるか。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byAFLO
posted2018/01/20 11:30
レンジャーズ、ドジャースと渡り歩いたダルビッシュ。今シーズン着用するユニホームは果たして……。
ヴァーランダーらと総投球回数を比べてみると。
この投球回数はかなり多い。30歳までにメジャーで2000イニングス以上を投げた投手というと、ここ20年ではフェリックス・ヘルナンデス、CC・サバシア、ハビエル・バスケス、マーク・バーリー、ジョン・ガーランド5人しか見当たらない。
やたら登板数が多い印象のあるジャスティン・ヴァーランダーでさえ、30歳まで(2005~2013)の投球回数は1772回にとどまっている。今年2月には35歳を迎えるが、これまで13年間の投球回数は合計2545回。平均すると年間196イニングス近くを投げている計算になる。WAR(勝利貢献指数)の合計は、13年間で56.9。年俸総額は1億7000万ドルを超える。彼はトミー・ジョン手術を受けていない。
2017年のダルビッシュは、レンジャーズとドジャースの2球団で合計186回3分の2を投げた。トータルで10勝12敗、防御率は3.86、WARは3.9だったから、彼としてはまずまずの成績だ。
6年総額1億5000万ドル級の契約提示の可能性も。
ひっかかるのは、レンジャーズ在籍中の最終登板(7月26日。対マーリンズ戦)に3回3分の2を投げて10失点と打ち込まれ、ワールドシリーズ(対アストロズ戦)でも2試合に先発して、ともに1回3分の2で自責点4と乱打乱撃を食らったことだ。
原因についてはいろいろ取り沙汰されたが、使用球が滑ってスライダーが曲がらなかったことに加えて、癖を見抜かれていたことが最も大きかったようだ。セットポジションで球をグラヴに戻す際に、握りを変えるか変えないか。
これによって、速球が来るか変化球が来るかがバレていたというのだ。ダルビッシュにしてみれば、やれやれという気分だろうが、球威そのものが落ちたわけではないから、修正は十分に可能だろう。むしろ気をつけたいのは、肘や肩の故障を再発させないことではないか。あとは経年疲労。
ここさえクリアすれば、6年総額1億5000万ドル近い条件は提示される可能性がある。モデルとなるのは、FA資格を持っていた2014年12月に、カブスと6年総額1億5500万ドルの契約を結んだジョン・レスターのケースだ。'15年開幕時のレスターは31歳。契約前4年間の成績は、830イニングスを投げて55勝42敗、防御率3.61だった。