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スターウォーズ顔負けのペレ一族。
父の夢、そして長男のダークサイド。
posted2017/12/15 07:00
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph by
AFLO
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」が15日、公開された。スカイウォーカー家をめぐる壮大なスペースオペラのテーマの1つが、親子の複雑な関係性だ。
反目、葛藤、そして愛情……。実はサッカー界も、親子にまつわるエピソードには事欠かない。ブラジルが生んだ最大のスーパースターもその1人だ。
ほんの昔、遥か彼方の南米の大国で……。
世界最多となる5度のワールドカップ制覇を誇るブラジル。今をときめくネイマールやかつてはロナウド、ジーコら様々な天才プレーヤーを輩出して来たサッカー王国で「史上最高のサッカー選手」という肩書きを独占し続けて来たのがエドソン・アランテス・ド・ナシメント。
ペレの登録名で知られる世界的スターである。
「レイ(王様)」と呼ばれるペレは今年77歳を迎えたが、ナシメント家にまつわる数々のエピソードは、ブラジルサッカー界の伝説だ。
「いつか僕がブラジルを優勝させるから」
ナシメント家における奇跡の物語の始まりは、1950年7月16日のことだ。
初めての自国開催となるW杯で、ブラジルは決勝リーグで順調に勝ち星を積み上げていた。当時は決勝トーナメント方式ではなく、グループステージを勝ち上がった4チームが総当たりで優勝を決める方式だったが、ブラジルは最終節のウルグアイ戦で引き分け以上で悲願の初優勝。だが、20万人の観客が集まった聖地マラカナンスタジアムでブラジルは1-2でまさかの逆転負けを喫し、この一戦は「マラカナッソ(マラカナンの悲劇)」として、ブラジルの国家的悲劇として未だに記憶されている。
当時はラジオでサッカー中継を聞くのが一般的だったが、当時32歳でプロ選手だったドンジーニョが悲劇的な敗戦に涙するのを幼きペレは見たという。
「お父さん、泣かないで。いつか僕がブラジルを優勝させるから」