スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
バレンシアが2位なんていつ以来!?
メッシ&スアレスを上回る2トップ。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2017/11/12 09:00
リーガでメッシに次ぐ得点ランク2位につけるザザ(右)。バレンシアの復興はこのイタリア人にかかっている。
2人で挙げたゴールはメッシ&スアレス以上。
しかもこの2トップはFWが求められる最も重要な仕事もしっかりこなしている。ここまで2人は計16ゴールを決めているが、これはバルサのメッシ&スアレスペアをも上回るラ・リーガトップの数字である。
生粋のストライカーであるザザはともかく、これまでゴール数が決定的に欠けていたロドリゴの覚醒ぶりは驚きだ。今季はラ・リーガの11試合で26本のシュートを打ち、すでにシーズン自己ベストを上回る7ゴールを決めている。つまり4本に1本以上の確率でゴールネットを揺らしているのだ。
これまで器用貧乏な印象が拭えなかった26歳は、今季の活躍により10月に3年ぶりとなるスペイン代表復帰を果たし、アルバニアとのワールドカップ予選で初ゴールも決めた。
ここまでメッシに次ぐ得点ランキング2位の9ゴールを挙げているザザは、ワールドカップ予選プレーオフに向けたイタリア代表に1年ぶりに復帰を果たしたが、その後怪我で離脱してしまった。直前のレガネス戦で7戦連発の世界新記録を樹立できぬままベンチに下げられていただけに、無念だったことだろう。
「リーグ優勝は実質的に不可能」とは言うが。
絶好調の2トップに牽引され、バレンシアは過去数年の迷走ぶりが嘘のように勝利へと突き進んでいる。
年内に残された大一番は、13節のバルサ戦と17節のビジャレアル戦だ。特にバルサ戦は現実的な目標であるCL出場権にとどまらず、今季のチームにリーグタイトルを争える力があるかどうかを占う一戦として注目されている。
「リーグ優勝は実質的に不可能。勝ち点90はバレンシアが到達できる高みではない。4位になれるなら今すぐにサインするよ」
マルセリーノは先日、出演したラジオのインタビューでそう言って笑っていた。
指揮官の言う通り、ヨーロッパでの戦いがないメリットがあるとはいえ、選手層の薄いバレンシアがこの勢いを1シーズン維持することはまず無理だろう。この輝きがいつまで続くかは分からない。分からないからこそ、今バレンシアのフットボールを見ておくべきだと言えるかもしれない。
今の彼らのプレーは、それくらい痛快なのだ。