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勝者ガトリンに“He is a doper!”
ボルトが善なら、悪役とされた男。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2017/08/09 10:30
ボルトに勝利し、感無量の表情を浮かべるガトリン。しかし競技場に詰めかけたファンの対応は手厳しかった。
短距離界に再び「アメリカの時代」が到来しつつある。
たしかにイギリスのメディアを見ていると、ドーピングに対しても厳しい倫理観を持っている(表現方法は様々で、とんでもないのもある)。“Doper”に対しては冷たく、それが今回の辛辣なブーイングの背景にある。
その意味で、クリーンなボルトは「善」を代表する存在だったのである。
それにしても、今回の世界選手権では、この10年ほどジャマイカが支配してきたスプリント界の構図が、大きく変わろうとしているという印象を受ける。
男子100mでアメリカがワンツー、女子100mでもアメリカのトリ・ボウイが見事なフィニッシュで金メダル(これには鳥肌が立った)。
再び「アメリカの時代」が到来したかのように感じる(サニブラウンは、秋からそのアメリカの大学で学ぶわけだ)。
いま、ロンドンで時代が動いている。
週末に行われる4×100mリレーがどうなるか。
ロンドンのファンは、地元イギリスだけでなく、ジャマイカにも熱い声援をおくるはずだ。
ガトリン、そして「トランプのアメリカ」はだいぶ、嫌われている。