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21失点の多治見応援席は笑顔だった。
センバツ21世紀枠、なんかいいな。

posted2017/03/23 07:30

 
21失点の多治見応援席は笑顔だった。センバツ21世紀枠、なんかいいな。<Number Web> photograph by Kyodo News

大量点を奪われた多治見高校について、21世紀枠の意義を問う声もあった。しかし、そこにこそ意義がある、ともいえるのだ。

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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Kyodo News

「21世紀枠」の多治見高(岐阜)が21-0で報徳学園高(兵庫)に敗退した試合。

 7回、点差が16点に開いた時に、多治見高応援の三塁側アルプス席へ行ってみた。

 試合終盤、絶望的な点差、反撃の兆しなし。ネット裏の記者席から見ていたら、シーンと静まりかえっているように見えた。しかし、“アルプス”に入ってみて驚いた。

 みんな、笑っている。

 試合の展開を静かに見守りながら、グラウンドを向いている応援団の顔が、みんな笑っている。

「ようやっとる、ようやっとる! 半分は“ゼロ”に抑えとるだーに!」

 お国ことばがスタンドに響いて、あたりがドッと沸いた。

 7回を終わって、確かに、多治見高はそのうちの3イニングを0に抑えていた。

「毎日、家の前、自転車で通る子たちが、あそこでね、あんなに頑張ってて。ほんとに、いつものあの子たちなのかねぇ」

「あの子たちが、甲子園で野球やってるのがすごい」

 新聞記者のインタビューに答えているおばちゃんが、メガネの中の目を薬指で拭いている。

 花粉なのか、なんなのか……。

「報徳は強いでしょう。野球なんか知らん私らだって知っとる高校やもんで、このぐらいやられるのは仕方ないのかもしれんけど、あの普通の高校生のあの子たちが、この甲子園で野球やってるのがすごいですよ。私ら、勝ち負けより、甲子園のあの子ら見られただけで、もう十分満足ですよねぇ」

 勝っているチームの応援団のような高ぶり。

 よかった……と思った。いいな、とも思った。

【次ページ】 記者席では、21世紀枠の意義に疑問が出ていた。

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