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「軽く振っても飛ぶってところ」
さあ、清宮の春が、やってきた! 

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Number編集部

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photograph byHideki Sugiyama

posted2017/03/16 07:00

「軽く振っても飛ぶってところ」さあ、清宮の春が、やってきた!<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

センバツでの初戦は3月23日。対戦相手は、松井秀喜を5打席連続敬遠にした名門・明徳義塾高校となった。

清宮が掲げた、独特のスローガンとは?

 これは清宮が主将に就任してから掲げた公約の、ひとつの成果だ。

 昨夏の甲子園出場をかけた西東京大会の準々決勝・八王子戦で、9回表に清宮が放った打球は右翼フェンス手前で失速。この敗戦を機に清宮は新チームのスローガンを「GO! GO! GO!」として、投手の球速「5」kmアップ、打者の飛距離「5」mアップ、そして全員の体重「5」kgアップをメンバーに課した。

 一見すると楽しげに聞こえるスローガン「GO! GO! GO!」だが、清宮の徹底ぶりはすさまじかった。

 例年であれば冬場も毎日のようにグラウンドで練習していたところを、学校に残って体幹トレーニングのみ行なう日を設定。ベンチでおとなしくしている選手には、しつこいくらいに声を出すことの必要性を説く。

 こうして「打力と明るさ」という武器を得た早実は、やや投手力が弱いと目されながらもそれを補えるだけのチームカラーを確立した。

「ひとつにならなきゃ、チームじゃないので」

 意外だったのは、チームメイトに対する清宮のアプローチだ。

 清宮自身は1年生の頃からどちらかといえばマイペースで、高校野球らしい規律からは外れた存在という印象だった。それだけに、他人の個性を尊重するタイプのようにも見えるのだが……。

「打ち方とか守り方とか、そういうのはそれぞれ(自分のやり方が)あると思うんです。でも、チームとしてこうやろうっていうときにそれと外れたことをされると……こうやろうっていうときにひとつにならなきゃ、チームじゃないので」

 一般的にセンバツ出場をかけた秋季大会は、3年生にとって「最後の夏」となる夏の甲子園の予選ほど切迫した雰囲気にはならない。しかし、清宮はこのセンバツ出場に照準を定めて自身とチームを追い込んでいた。それは1年の夏、初めて経験した西東京大会の光景に起因している。

【次ページ】 「ああ、この人たちはすべてをかけていたんだな」と。

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清宮幸太郎
早稲田実業高校

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