セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
酉年に飛翔する“イタリアの雄鶏”。
国民的支持を受けるFWベロッティ。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2017/01/11 11:00
セリエAを騒然とさせているベロッティのとさかポーズ。空席だった“アズーリの本格派ストライカー”の座もほぼ手中に収めた。
本人の憧れは「誰が何と言おうと、シェフチェンコ」。
だが、ベロッティ本人の憧れは「誰が何と言おうと、シェフチェンコ」。
完全無欠だったと崇めるウクライナ人ストライカーの域へ近づくため、ベロッティは「マリオ・ゴメスのゴール前での冷静さ、トーレスのマークを外す技術、それからドログバのフィジカルを活かす動き」を研究した。
今、何とかモノにしたい、と躍起になっているのは、FWアグエロ(マンチェスター・C)のポジショニング・センスらしい。
クラブレベルで欧州カップ戦への出場経験が未だないのはキャリア上の難点ともいえるが、貪欲であることが一流選手の条件なら、ベロッティにはその資格が十分にある。
若くして代表の先発FWにのし上がったのは事実だが、ベロッティは自分のことを決してエリートだとは思っていない。
北都ベルガモに生まれたベロッティには、地元の育成王国アタランタのセレクションに落ちた苦い記憶がある。
イタリア以外への移籍金は、なんと1億ユーロ!
さまざまなポジションを経験した後、センターフォワードの適性を見出されたのは3部の零細クラブで、叩き上げとして売り出すと'13年夏にいくつかのセリエAクラブから声がかかった。
しかし、プレー機会を第一に考えたベロッティは当時セリエBにいたパレルモへの移籍を決断。二桁ゴールの活躍でA昇格を勝ち取った後、'15年夏にトリノへステップアップを果たした。
「自分のためにもチームのためにも、より多く点を獲りたい。今季は(シーズン最多得点記録を作った昨季得点王の)イグアインより多く得点できるはずだ」
ベロッティは今季前半戦の好調に大風呂敷を広げた。だが、独特の応援熱で知られるトリノ・ファンの心根をつかむには、これほど豪語するぐらいで丁度いい。
昨年12月にはトリノと'21年まで契約延長した。名物男のカイロ会長が、イタリア以外のクラブ向けに破格の移籍金金額1億ユーロを設定したことで話題を呼んだ。
昨季までトリノを率いていた代表監督ベントゥーラは「正直度が過ぎた値付けだとは思うがね」と苦笑しつつ、「ベロッティにはまだまだ伸びしろがある」と愛弟子にさらなる成長を促す。