ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
マスターズで勝てば即日本の賞金王?
時代遅れのシステムに再検討の光を。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byAFLO
posted2016/10/09 11:00
今季のゴルフ界の顔になったローリー・マキロイだが、実は賞金では4位。日本から見ると少し違和感もあるが……。
欧州ツアーでも、賞金からポイントに中心が変わった。
マキロイが王者となったフェデックスカップの配分ポイントは、各大会の賞金額とは比例せず、プレーオフシリーズでのポイントが大きいために起こる現象だ。いまだに賛否はあるが、賞金レースとはまた違った価値を付加することで、シーズンを最後まで見どころのあるものにしようという米ツアーの“仕掛け”である。
米ツアーのポイントによるプレーオフ導入に倣い、欧州ツアーも2009年からレース・トゥ・ドバイというポイントレースが進行中。獲得賞金の1ユーロ=1ポイントで計算され、シーズン終盤の3試合はポイントが1.2倍になるシステム。いまや賞金レーストップという称号以上のタイトルを作るのが世界的な潮流だ。
ところで日本の男子ツアーにも、制度の見直しや、新しい仕掛けが必要な時期に差し掛かっているのではないかと思う。このままで、いいのかと。
谷原秀人が悩む、賞金王かマスターズ出場か……。
シーズン終盤戦を迎えるにあたり、谷原秀人が悩んでいた。
谷原は今季、夏場に2勝をマークして賞金ランキングトップを走っている。開幕から予選を通過した11試合のうち9試合でトップ10入り。ショットに悩んでも得意のショートゲームが安定した成績の下支えになっている。
シーズンが終盤戦に差し掛かるにつれて、谷原の周囲ではにわかに「賞金王」のフレーズがささやかれるようになってきた。だが本人はそんな周りの期待にも今のところ「そうですね」とクールに受け流すだけ。
もちろん日本ツアーはここから賞金の高い試合が連なり、まだ意識する時期としては尚早という思惑もあるだろうが、どうもキャリアで初めての称号とはいえ、“マネーキングの価値”にピンと来ていないようでもある。
いま谷原の頭に賞金王よりも強くあるのは、今年末の「世界ランキング50位以内」というターゲット。来年のメジャー初戦・マスターズの出場権が獲得できるハードルだ。
「いまは賞金王になればマスターズに行けるというものではなくなったから。昔とは違うからね」と谷原が言うように、2014年の賞金王・小田孔明、昨年のキム・キョンテはいずれも年度末の「世界ランキング50位以内」の資格を満たせず、翌年春までにマスターズ委員会から招待状が届かなかった。
'04年に同様の形で賞金王になった片山晋呉には特別招待の知らせが届いたし、現行の世界ランキングシステム導入前の1998年以前は、日本ツアーの賞金王=マスターズ出場という慣例めいた図式があったのだが……。