野球のぼせもんBACK NUMBER
バカになれるから愛される「KZさん」。
SB川島慶三、負傷をも笑い飛ばして。
posted2016/08/18 11:30
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
NIKKAN SPORTS
二塁ベース上での併殺崩し。
あのアクシデントを乗り越えて、川島慶三が一軍に帰ってきたのは7月29日のことだった。
「僕の中では、アッという間でしたよ」
いや、かなりの時間を要した大怪我だった。
その悪夢は今季開幕直後、4月3日の試合でのこと。東京ドームでのファイターズ戦だった。
ホークス1点リードの守り、6回無死一、三塁。中田翔の打球は強烈な三塁ゴロとなった。三塁走者はそのまま動かず、それを確認した松田宣浩は「5-4-3」の併殺を狙いに行った。だが、送球を見て三塁走者が本塁へスタートを切る。二塁ベースカバーに入った川島はそれに気づいてバックホームをしようとした。
だがその瞬間、一塁走者だった田中賢介の激しいスライディングを右ひざ下に食らったのだ。転げるようにして倒れ込む。プレーは続行され、ホークスは同点を許した。
3週間固定しなければならない右足首の靭帯損傷。
川島の負傷は骨にこそ異常はなかったものの、「右下腿(かたい)打撲、前距腓靱帯(ぜんきょひじんたい)および踵腓(しょうひ)靭帯損傷」と診断された。いわゆる右足首を全く動かせない状態で、患部を3週間も固定しなければいけない重傷だった。
このプレーの際、工藤公康監督は「守備妨害だ」と激しく抗議したが受け入れられなかった。今季から本塁クロスプレーの「コリジョンルール」は導入されたが、それ以外の塁の危険スライディングについては、問題視されながらもルール化に至っていないためだった。
だが、メジャーではすでに「禁止」が明文化されている。この川島の一件でファンは大いに声を上げた。コリジョンルールの本格整備もさることながら、この問題も球界全体として今後しっかりと動いていくべき、と思わずにはいられない。
ただ、川島は、多くの野球ファンが田中に痛烈な非難を浴びせたことには「待った」もかけていた。