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西川周作はPKを志願する男である。
「迷ったら、前へ。それが自分」 

text by

轡田哲朗

轡田哲朗Tetsuro Kutsuwada

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photograph byJ.LEAGUE PHOTOS

posted2016/05/26 17:00

西川周作はPKを志願する男である。「迷ったら、前へ。それが自分」<Number Web> photograph by J.LEAGUE PHOTOS

西川周作は志願してPKキッカーとなり、そして敗れた。しかしその決断を非難する資格は誰にもない。

「悔いはないのだけど、もう少し仕事をしたかった」

「今日の試合に関しては、自分が外したから、止められなかったから負けてしまったと言われると思う。GKとして、タイミングが合わずに逆を取られることもあったけど、自分なりに考えてやった結果なので、自分で受け止めなくてはいけない。

 頭の中に相手のデータは入っていたが、途中からはデータのない選手になった。そこからは自分の感覚と駆け引きだと思っていたし、止めてチームを救えなかった自分の力の無さを感じる。自分の感覚を信じてやった結果ですし、悔いは全然ないのだけど、もう少しチームのために仕事をしたかった」

 西川周作というプレーヤーと話をする中でいつも感じさせられるのは、そのポジティブ思考の強さだ。浦和には那須大亮や槙野智章といった、起こったことをとにかく前向きに捉えていく選手たちもいるが、西川の場合は少しイメージが違う。

 打たれ強い、もしくは逆境から這い上がっていくというよりは、起こったことを自然に受け止めながら、芯がブレない。全てを受け入れて、その上で前に進んでいく強さを感じさせる。

自らの失敗を常に冷静に振り返り、言葉にする。

 今季で言えば、リーグ戦の第2節ジュビロ磐田戦の後がそうだった。西川は厳しい状態でのバックパスを味方につなごうとしたが、それが結果的にミスになり失点した。それでも試合後には、話したくないはずのその時の状況を冷静に振り返り、どのような判断で、どのようなプレー選択をした結果、どこにミスが発生したのか、そしてそこから何を学ぶのかということを明確に言葉にした。

 常々、「失敗から学ぶ」という言葉を口にする男だが、リスクを背負うプレーでミスが起こったとしても、そのたびに学んでいく。そうしてプレーの幅を広げている感がある。

 それでも、どうしてここまで彼は、自身を厳しい状況に追い込む可能性がある道に、一歩を踏み出せるのだろうか。

 何もアクションを起こさなければミスは発生しないし、キッカーに名乗り出ることなくGKに専念し、その結果が敗戦になっても誰も文句は言わないだろう。しかし西川は自らアクションを起こし、全てを背負い込む。これは、彼の持っている強烈なパーソナリティーの一つだ。

【次ページ】 「迷ったら、前へ。それが自分だと思っています」

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