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ベイスターズ今永昇太のコメント力。
新人離れした理知と投球の源は?
posted2016/05/18 11:00
text by
日比野恭三Kyozo Hibino
photograph by
NIKKAN SPORTS
DeNAのドラフト1位ルーキー、今永昇太がにわかに注目を集めている。
開幕から先発ローテーションを守り、防御率や奪三振数のランキングで上位に入る実力もさることながら、新人とは思えない冷静かつ理知的な発言が話題となっている。
開幕前から、彼のコメント力には舌を巻いてきた。例えば3月9日、鎌ケ谷で行われた日本ハムとのオープン戦が印象深い。
空気は冷え込み、さらに雨も強まるという最悪のコンディションで始まったゲーム。ぬかるむマウンドに立った今永は、走者を背負う苦しい投球を強いられた。結局、3回途中で降雨ノーゲームとなった試合後、記者に囲まれた22歳はこう自らのマウンドを振り返った。
絶妙なバランス感覚を備えたコメント。
「今日、気をつけたいなと思ったのは、マウンドでの振る舞いというか。自分の足元を気にしたり、雨のせいで制球が定まらないっていうしぐさを見せたり、そういうことをしていると絶対にチームはいい方向にいかないと思うので。雨のせいにするのではなく、その中でもしっかりと自分ができることをやろう、あくまでも淡々と投げる姿を見せようと思っていました」
もはやエースのような心構えを口にしたかと思えば、初めて投げ合った大谷翔平についてはこうコメントした。
「自分が大谷くんに勝てるところを探したんですけど、まだまだ足元にも及んでないなと。タイプも違いますし、あまり相手ピッチャーを意識することはないんですけど、日本球界を代表するピッチャーと2イニングでも投げ合えたということは、絶対自分の野球キャリアにはプラスになると思う。年下ながらほんとに堂々とした振る舞いだったので、そこは素晴らしいなと思いました」
謙虚に大谷を持ちあげつつも、タイプは違うので比較対象にはならないこともにおわせる。なんとも絶妙なバランス感覚にうならされたものだ。