球道雑記BACK NUMBER
春のフォーム改造がようやく実に?
西勇輝、開幕3連敗からの復活劇。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2016/04/25 12:00
昨季は侍ジャパンでも活躍し、2年連続2桁勝利の記録を残している西なのだが……。
本来のスタイルで待望の今年初白星!
その進化の手応えを、西もそれとなく感じている。
「前の西武戦もそうですし、3戦目のソフトバンク戦から徐々に良くなってはきています」
4月17日のほっともっとフィールド神戸で行われた埼玉西武戦。
この日、6回を7安打1失点に抑えた西は、2016年最初の白星を挙げた。
なかでも圧巻だったのは初回、1死二塁で、開幕から好調を続けているメヒアを打席に迎えた場面だが、ストレートとスライダーを外角低めに集めてカウントを稼いだあと、勝負球の直球を内角低めに決めて三振を奪った。
これこそが彼本来の投球スタイルであり、窮屈そうなスイングをしたメヒアの反応からしても、相応の手応えを感じとったに違いない。
2勝するも、目指す姿との間にはまだギャップが。
1週間後の4月24日の千葉ロッテ戦は、6回2/3を投げて3失点するも今季2勝目を挙げた。先に山崎が課題に挙げたスライダーの制球もだいぶ収まってきており、山崎の要求通りの球が来ている印象も受けた。
それでも試合後の西は、満足した様子はなかった。
中継ぎ陣の疲労を少なくしようと、この日は完投を目指してマウンドに向かったが結果として最後まで投げきれなかったこと。7回の同点のピンチで、首脳陣に「この場を任せる」とは信頼されずに回の途中でマウンドを譲ったこと。これらを口にした。
自身の連勝については、「(2勝したからと言って)落ち着いた感じはあまりしないので、次はしっかり自分が投げ切って、勝ちもつけたいと思います」と振り返る。自身の目指す姿と、現在の姿にまだまだギャップがあるようだ。
試合後、球場正面の出入り口付近を通り過ぎる彼に、ファンの一人が声をかけた。
その声に気付いた彼は、取材を一時中断してそのファンの近くへと駆け寄り、プレゼントを受け取ると、しっかり礼を伝えてから、再び取材の応対に戻った。
周りが見えていなければできない行為だし、ファンを大切にする西らしい行為のようにも思えた。またそうした余裕が生まれてきたことにも、次回登板の期待が膨らむ。