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ほぼ無風のF1ドライバー移籍市場。
唯一移籍するグロージャンの思いとは。
posted2015/12/30 11:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
2015年シーズンを戦ったチームのうち、マノー・マルシアを除く9チーム18人のドライバー中じつに17人が、2016年も同じチームからレースに参戦する。近年のF1では珍しい状況である。
理由として考えられるのは、2015年のドライバーの質が程よく安定したレベルだったことだ。それを象徴していたのが、ルーキードライバーたちの活躍である。
開幕戦ではザウバーからF1にデビューしたフェリペ・ナッサがいきなり5位入賞。これはブラジル人ドライバーのF1デビュー戦としては最高位で、ネルソン・ピケやアイルトン・セナといった偉大なる先輩たちを上回る記録だった。
F1史上最年少となる17歳166日でデビューを果たしたマックス・フェルスタッペンの走りも、期待以上だった。デビューわずか2戦目で初入賞を果たしただけでなく、ハンガリーGPとアメリカGPでは表彰台まであと一歩に迫った。
ザウバーはシーズン中盤にナッサの残留を発表。トロ・ロッソは正式発表していないものの、アドバイザー役のヘルムート・マルコが「2016年もドライバーラインアップに変更はない」ことを明かしている。
シート争いが白熱しない真の理由。
だが、2016年へ向けて、ストーブリーグが例年ほど熱くなっていない理由はもうひとつある。それは、チームが必要とする持参金を用意できるドライバーが限られているため、シート争いが過熱しないからである。
そんな中、チームの引き留め工作を振り切ってまで、移籍という道を選んだドライバーがいる。2015年までロータスで戦っていたロマン・グロージャンだ。
グロージャンが所属していたロータスは、シーズン途中から財政難に陥り、取引企業への不払いから、後半戦は常に参戦が危ぶまれるという状況で戦っていた。そんなロータスにシーズン後半に手を差し伸べたのが、かつて共に戦った仲であるルノーだった。
イギリス・エンストーンにファクトリーがあるロータスは、2002年から9年間、ルノーの支援を受け、「ルノー」の名前でF1を戦い、2005年と2006年に2連覇した経験を持つ。それだけに、ルノーとのコンビ復活の話はロータスにとって、明るくなるニュースになるはずだった。