野球クロスロードBACK NUMBER
あの“細かすぎるモノマネ”芸人が、
四国ILのトライアウトで真剣勝負!
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2015/11/04 10:40
「放課後3時から遅くて11時まで練習していた。休日はずっと練習だった」と高校時代を語る杉浦。
参加資格は「高校3年生以上の野球経験者」とだけ。
トライアウトリーグの参加資格には「高校3年生以上の野球経験者」としか明記されておらず、年齢制限はない。それも杉浦の背中を後押しした要因だった。
意気込みはある。だが、年齢はもちろん、仕事とトレーニングを両立させることは、芸人という不規則な仕事に就く杉浦にとって困難だ。
ランニングやウエイトなど、ひとりでできるトレーニングは毎日行い、草野球だって今も変わらず週に数試合こなしている。しかし、硬式球を使ってのピッチングを開始できたのは9月の下旬からで、本人いわく「まだ硬球がしっくりこない」のが現状なのだ。四国アイランドリーグのトライアウトリーグでは、初日の体力測定以外は全て実戦形式のテストとなるため、投手の杉浦は必然的に連投を強いられる。
「なかなか満足のいく練習ができていませんけど、それも含めて今の自分がどこまでやれるのか楽しみではあります」
杉浦は努めて前を向くが、不安要素を完全に払拭できているかといえば、そうではない。
メディアは話題作りの一環として杉浦の挑戦を肯定してくれるが、世間の全てが応援しているわけではないだろう。
「芸人ではなく僕個人の人生として『やってみたい』」
思い出作り――そんな彼の狙いを憶測する、あるいは「芸人としてのアピール」と勘ぐる人間だっているだろうし、「芸能活動と野球の両立なんて中途半端だ」と、杉浦の行為を否定的に捉える者だっているかもしれない。
厳しい事を言うようですが――と、客観的な意見を伝えると、杉浦はうん、うんと頷く。「それは違います!」と即座に反論することもできたはずだ。しかし彼は、言葉を真摯に受け入れ、ゆっくりと口を開く。
「お笑いに対して失礼なことをしているのはわかっていますし、事務所や相方(山内崇)にも自分勝手な行動をして申し訳ないと思っています。でも僕は、本当に野球が好きなんですね。好きだからこそ、草野球に真剣に取り組んでいるつもりです。今回、トライアウトを受けるのは芸人としての人生ではなくて、僕個人の人生として『やってみたい』と思ったからで。
お笑いの世界でいろんな人にお世話になってきましたし、まだ恩返しもできていないので、今後ももちろん続けていきたい。でも野球は、自分のなかで体が動けると感じている今しかできないんです。何回でも言いますけど、動けなくなってから『あの時、受けておけばよかったな』って後悔だけはしたくない。なので、僕は周りから何を言われようとも、このチャレンジだけはさせてもらいます」