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“ボールピープル”を通して変わりゆく世界を見つめる。
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph byAtsushi Kondo
posted2014/08/12 13:00
「カメラを持つ時はリアクションサッカーが信条(笑)」
サッカーが生活の一部になっているはずの王国・ブラジルで開かれた4年に一度の祭典。だが、近藤にとっては多少拍子抜けした面もあったという。
「ワールドカップという大会が、ひとつの商品パッケージのようになっていました。スタンドからサンバの音が流れてこないし、小便の入った紙コップが落ちてくるわけでも、人がピッチに雪崩れこんでくるわけでもない。スタジアムに来る地元の人もお金持ちが多かったしね。もうちょっと人間の“素”が爆発した下品さというか、混沌が撮れると思っていたんだけど」
ただ、前回優勝のスペインがグループリーグで敗退し、コスタリカがベスト8に躍進、そしてセレソンがドイツに1-7で惨敗したという事実が今後のサッカー界の新しい流れをつくっていくように、ブラジルの“ボールピープル”たちの変化は近藤にとって新しい刺激となり、撮る写真を変えていった。
「撮る相手が変わっていくんなら、僕も撮り方を変えなきゃいけないなって。例えばアルゼンチンやブラジルのサポーターが騒いでいるときに、携帯で周りを撮影しながらわめいてる(苦笑)。そういうのにシラケちゃう面もあるけど、その携帯を含めて撮らないといけないなと思ったんです。もちろんリオの街角を探せば古き良きサッカーの風景も残ってる。でも、そういう昔の自分が憧れたノスタルジックな被写体を相手にするんじゃなくて、既視感のない新しい写真が撮りたかった。そのためにチリやメキシコのサッカーのように、カメラマンとしての戦術をアップグレードさせました。カメラを持つときはリアクションサッカーが信条なんだけど、そこはザックジャパンよりうまくいったんじゃないかな(笑)」
自らのイメージにあわせて撮るのではなく、目の前の現実にあわせて写真を撮る――。
2014年夏、世界で最もサッカーボールを撮っている(おそらく)写真家が撮った作品を眺めていると、こんなことを感じるはずだ。
サッカーを通じて世界が見える、そしてその世界は変化し続けている。
サッカーを通して、世界が見える。
<コニカミノルタプラザ特別企画展>
近藤篤 写真展
ボールピープル
詳しくはコニカミノルタプラザのホームページへ
マグナム・フォトグラファーズ写真展
MAGNUM FOOTBALL
25 MAGNUM PHOTOGRAPHERS
David Alan Harvey / Magnum Photos
写真家集団「マグナム・フォト」のサッカーにまつわる作品を展示。
独特の美意識で切り取られたドキュメントをご覧下さい。
2014年8月16日(土)~9月8日(月)
10:30~19:00 (最終日は15:00まで) 会期中無休・入場無料