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なぜDeNAがグリエルを獲得できたか?
池田球団社長が語るキューバ道中記。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byYOKOHAMA DeNA BAYSTARS
posted2014/06/07 10:30
DeNAのユニフォームに袖を通したグリエル選手と、池田球団社長(左)。二軍戦ではすでにホームランを放ち、一軍での活躍が期待される。
「あなたたちが最初に来た球団だ。よく来たね」
――でも、何故、キューバの至宝と言われるグリエルを、まったく縁もゆかりもない横浜DeNAが一本釣りなんて大技ができたんですか? 池田さんはキューバに強力なパイプがあったとか。
「いやいや。伝手もコネもまったくないですよ。そもそも昨シーズンのオフ、私たちはまだまだ補強をする必要があり、外国人選手の補強も、様々な可能性を考えました。ドミニカのウィンターリーグにも国際担当と足を運びましたけど、その辺りの市場は日本もアメリカもあちこちにたくさんの球団が入っていて、掘り起こされていない未開の部分がほとんどない。そうなると最終的に金銭での争いになりますから、どうしたって戦える限界が出てきてしまう。横浜DeNAベイスターズはナンバーワンの選手が欲しかったんです」
――そんな時、昨年9月にキューバ政府が選手の海外移籍を容認する発言があったというわけですね。
「そうですね。おそらく他球団も相当考えたのではないでしょうか? ただその後、何カ月経っても以降の進展が聞こえてこない。どこかの球団が動いたなんて情報もまったく聞こえて来てないので、あれ? これはもしかしたら手つかずの可能性があるぞ! と、いうことで急いでアポを取り正確な情報の把握と交渉のためにキューバに渡りました。キューバ政府と野球連盟の人にこう言われましたよ。『あなたたちが最初に来た球団だ。よく来たね』と」
「私たちはナンバーワンの選手が欲しい」
――手つかずのまま残っていたと。まぁ、キューバ政府がいくら選手を出すと言っても、プレイヤーとしては薹が立ったご年配の方か、経験の乏しい若者ぐらいだろうと考えるでしょうし、まさか国宝クラスのグリエルを出すとは誰も思いませんからね。
「最初に『獲得を希望する選手をリストにして下さい』と言われたんですね。そこで『私たちはナンバーワンの選手が欲しい。可能性はありますか?』と伝えたんです。その時はまだ“可能性”でしかなかったんですが、そこからキューバ側と我々の国際担当とで、何度もやり取りをしていくうちにしっかりとしたパイプが出来だしたんです。
具体的にグリエルという名前が出たのは春季キャンプ期間中ぐらいの時期でしょうか。それで、3月にうちの国際担当がもう一度、キューバ入りをして。で、グリエルを正式に視察して具体的な交渉に入って行きました」