野球善哉BACK NUMBER
選手の発掘はチーム強化の第一歩。
プロ野球スカウトに正当な評価を!
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2010/12/12 08:00
西岡が夏の甲子園に出たのは2002年のこと。大阪桐蔭高校の3年生にして4番打者であった
成果を上げればGMにもなれるメジャーのスカウト。
これを、アメリカの場合を例に取ってみると具体的で面白い話がある。
メジャースカウトの話では、ある選手に対して、サインしたスカウトの名は残っていくのだという。たとえば、獲得した選手がオールスタープレイヤーやサイ・ヤング賞などのタイトルを取ると、スカウト自身の名も上がっていく。箔が付いていくのだ。
スカウティング能力が認められ、成果を繰り返していくと、やがてはGMという夢までつかむことができる。もちろん、逆もあり、「下位指名」と評価した選手が他球団で上位指名され、オールスタープレイヤーにでもなったりするとやり玉に挙げられるのだが、そうした仕事に対しての評価が明確にあるから、メジャーのスカウトはやりがいを感じているのだそうだ。
「みんなで、選手を獲得する」のが日本流だが……。
とはいえ、これをそのまま日本に当てはめられるかというとそう簡単にはいかないだろう。ある日本球団のスカウトにこうした評価を日本でもやらないのかと尋ねると、きつく言い返されたものだ。
「いや、そんなことをしたら、それぞれのスカウトが、いい選手ばっかりしか見に行かなくなって、スタンドプレーに走るでしょう。スカウティングはそういう問題ではない。みんなで、選手を獲得するんだから」
アメリカと日本の文化の違いを考えれば、話を同じ土俵にあげてはいけないかもしれない。功績に対しての評価をどう明確にしていくかは各球団の方針によるとしても、「スカウトの仕事はもっと評価されるべきものである」という機運だけでも日本の野球界にあっていいのではないだろうか。
現状を変えうる手立てとしては、毎年シーズン前に各新聞社・出版社から発行されるあの手のひらサイズの選手名鑑に、担当したスカウトの名前を載せるという方法もある。それを実現するためには球団の協力が必要だが、スカウトという仕事は特別なものだという評価を与えるためにもぜひ実現してもらいたい。