野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
これぞ男だ! 涙なしでは読めない、
プロ野球「引退の言葉」傑作選2010。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/12/11 08:00
「ロッテ・オリオンズ」時代のユニフォームを着たことがある、川崎球場時代を知る最後の選手だった堀。「(昔は)弱いチームで、優勝したいなど口にできなかった。2005年の優勝は一生忘れない」
「全く悔いがないと言えば嘘になるが、トライアウトも受け、やることはやったのですっきりしています。やっぱり野球が大好きですし、この先も野球をやりたいという気持ちは正直今でもありますが、そうも言っていられない事情もありますし、まず第一に家族のことを考えていかないといけないというのが、ここ何日間か頭に入るようになってきたので、もうそろそろけじめをつけたほうがいいかなと思うようになりました」
12月3日、ロッテひと筋23年の大ベテラン、堀幸一が現役引退の会見を行った。最後のオリオンズ戦士にして、今季日本一となった千葉ロッテが掲げた「和」に入れず悔しい思いをしたであろう堀の言葉を聞いた瞬間、不覚にも涙腺が決壊してしまった。
引退の潮時を悟った堀が見せた“男の散り様”。
というのも、先月行われた第一回トライアウトで2安打1本塁打と結果を残した後に堀が言ったこんな言葉を覚えていたからだ。
「最終的には『自分が本当に野球を続けたいのか』ということをよく考えて決めると思う。野球への情熱が残っているうちは、たとえその場所が独立リーグでも、収入がゼロになろうともこうやって挑戦をすると思うし、家族にも頼みますよ。『パパ、給料0円になっちゃうけど野球やってもいいか?』ってね。辞めるという結論になったら……その時は、単に僕の中に野球を続けていく意思がなくなったというだけのことです」
これを前提に冒頭に書いた会見の言葉を見直せば、どうであろう。引退を決意するまでの堀の深く複雑な苦悩が読み取れやしないだろうか。「野球を続けたい」という情熱だけで突っ走ることができなかった無念。それでも家族のことを捨てきれなかった優しさ。そして、そんな自分に野球選手としての見切りをつけようとした決意……エトセトラエトセトラ。
100%勝手な妄想で、そんな堀の心情を慮れば、熱い涙が止めどなく溢れてくるというもの。そう、恋する心などとうに忘れた35歳の枯れた冬。もはや己の頬を濡らすものは世の中で唯一つ、この時期に聞こえてくる野球選手の言葉だけであると気づかされるのだ。
見事なり、これぞ男の散り様。ああ、堀幸一。本当に、本当にお疲れ様でした。