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“スエマエ”解散。個性溢れるペアが
バドミントン界に残した財産。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKYODO
posted2013/09/23 08:01
最後の試合となったヨネックスオープン第2日、女子ダブルス1回戦で敗退した末綱(右)、前田ペア。
最後は涙で終わった。
9月18日、バドミントンのヨネックスオープン・ジャパンの2日目、ダブルス女子の末綱聡子と前田美順組は初戦で敗れた。
この大会で国際大会からの引退を決めていた末綱にとってのラストゲームであり、この2人による最後の試合でもあった。
10年近くにわたり、日本代表として活躍してきた末綱と前田は、2008年の北京五輪4位をはじめ、2011年世界選手権銅メダル、同年のBWFスーパーシリーズファイナルズ3位など、数々の好成績を残し、主軸であり続けた。
そればかりではなく、日本バドミントン界の歴史に風穴を開けたという意味でも、大きな財産を残したペアでもあった。
北京で感銘を受けた後輩が、ロンドンでメダルを。
北京五輪後、末綱と前田はメダルを目標にロンドン五輪に臨んだ。大会では2人は成長のあとを見せた。4ペアの総当たりで2ペアが勝ち上がれる予選は強敵のそろう激戦区に入るが、中国のペアにこそ敗れたものの、今まで一度も勝ったことのなかったデンマークのペアに勝利するなど2勝1敗の成績をあげたのだ。しかし、2勝1敗が3ペア並び、得失ゲーム差で勝ち上がれずにオリンピックを終えた。
この大会で、藤井瑞希、垣岩令佳が銀メダルを獲得した。藤井と垣岩は、メダルを獲得したあと、こう語った。
「先輩たちがいたおかげです」
藤井と垣岩は、末綱・前田と同じルネサス セミコンダクタ九州・山口の所属である。だがその言葉には、所属先の先輩だからという意味だけがこめられていたわけではなかった。
2人は、北京五輪を観客席で観ていた。垣岩は、のちにこのときの体験をこう語っている。
「先輩を観て、自分たちも出たいと思いました。もし先輩たちの活躍がなければ自分たちはこうしていませんでした」