野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
横浜ベイスターズ最終戦を行く。
「来年もこの場所で逢いましょう!」
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/10/12 12:50
試合開始:筒香が放ったプロ入り初安打&初本塁打。
試合は横浜・高崎、阪神・秋山の先発で午後6時にはじまった。
レフト、三塁側のビジター席には今日も大量の阪神ファンが詰めかけている。だが、今日は横浜側もライトスタンドだけでなく、一塁側内野席もかなりの人数が入っている。
しかも、応援の声が尋常じゃなく出ている。阪神ファンを圧倒するぐらいに。
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「横浜が誇る至高の戦士 共に闘おう!ここ横浜で」
そんな横断幕の下、回は進む。
4回。一昨年のドラフト1位松本啓二朗がレフトに先制本塁打を放つ。
7回。希望の星、スタメン3試合目の筒香が久保田からライトスタンドへプロ入り初安打にして初本塁打を放った。それは、筒香が敬愛するマシンガン打線の天才3番打者・鈴木尚に瓜二つのフォームから放たれた、一生忘れようがない美しすぎる放物線。こうして伝統は受け継がれ……。
球団歌「熱き星たちよ」はもう歌えないのか?
とにかく、その辺りから球場は異様な一体感に包まれていた。
ライトスタンドに、携帯で満員のスタンドを嬉しそうに撮影しているスタジアムDJ・ケチャップ氏を見かけた。
8回。1死一、三塁で4番村田。外野席の熱気は内野席まで伝播したのか、ほぼ総立ちの状態になっている。
「内川、村田 ベイを見捨てないで」
そんな横断幕が見えた。
結果はショートゴロゲッツー。いつもなら野次のひとつも聞こえてくるのだが、この時ばかりはため息だけしか聞こえなかった。うなだれる村田。何を思う。
投手では先発の高崎が7回を無失点に抑える今季一番の投球を見せると、牛田がピンチを乗り切り、山口が締めてゲームセット。
2-0で阪神に勝ってしまった。
阪神ファンからすれば、相変わらず空気を読まないベイスターズということになるのだろうが、次世代を担う選手たちの活躍によって得たこの勝利は、今季たった48個しか挙げられなかった勝ち星のなかでも、特別な価値があると、ほとんどの人が感じていただろう。
球団歌「熱き星たちよ」の大合唱が始まった。来季、チーム名が「横浜ベイスターズ」以外になれば、この歌を歌うのも事実上、最後になってしまう。そのことは、みんなどこかでわかっていたと思う。「横浜ベイスターズ」。12球団で唯一企業名を入れない、その名は横浜の誇り。
それぐらい大きな声だった。