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サイドスローらしくない投球術!?
決勝戦で試される一二三慎太の真価。 

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byHideki Sugiyama

posted2010/08/20 20:20

サイドスローらしくない投球術!?決勝戦で試される一二三慎太の真価。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

 ウイニングショットはアウトコース高目に決まる137キロのストレートだった。

 前日に153球を投げていたから、彼本来のスピードではなかったが、力の込もったストレートだった。打者のバットは空を切り、東海大相模が成田との関東対決を制し、決勝進出を決めた。

 エースの一二三慎太は、この試合を含めて4試合すべてに先発。初戦で1/3イニングを譲っただけで、ほぼ一人で投げ抜き、明日の大一番に挑む。

 本当にこれで良いのだろうか?

 今大会、一二三の登板を見るたび、そう思わずにはいられない。

 なぜなら、今の一二三は以前の彼とは違ってしまっているからだ。この春のセンバツまでは、右のオーバースロー、ストレートの最速が149キロを計測する本格派ピッチャーだった。それが今は、球速こそ140キロ台を計測するが、腕を下げて投げるサイドスローで落ち着いている。

 この春のセンバツだけでなく、昨年秋の神宮大会まで彼を見に行った者としては、その変貌ぶりに、少し物足りない気がしている。

オーバースローで149キロなのにサイドスローで147キロも!!

 昨秋、神宮大会での一二三のピッチングは圧巻だった。MAX149キロのストレートもさることながら、アウトコースを巧みに出し入れするピッチングは、それこそ唐川(千葉ロッテ)を彷彿とさせた。多彩な変化球を自在に操り、ベース上でこそキレを増すボールは、どれも大人びていた。

 そんな彼がセンバツで1回戦敗退したのち、投球フォームを崩し、腕を下げたというのだ。結果の出ている投手が腕の位置を変えるということはそれ相当の苦悩と決断があってのことだが、ドラフト候補、それも上位候補と言われた逸材が大英断の投球フォームの変更を余儀なくされたのだ。勝利至上主義が高校野球の今の風潮とはいえ、本当に良いのだろうかと、焦れったさを感じずにはいられない。

 しかし、それでも、一二三は甲子園へと帰って来た。

 初戦こそ本調子から程遠かったが、8四死球ながら3失点にとどめ勝利に貢献した。試合後の壇上では「ふがいないピッチングでしたけど、(勝てたのは)素直にうれしい」と笑顔を見せた。そして、圧巻だったのは3回戦の土岐商戦。7回までノーヒットに抑える快投を見せ、被安打1の完封勝利を挙げたのである。

 身体に力みのないゆったりとしたフォームから切れのあるストレートを投げ込む。ストレートの最速は147キロを計測し、スライダーも切れた。内外の投げ分けも見事だった。改めて彼の持っている能力の高さを見せつけたピッチングだった。

 オーバースローで149キロを投げ、サイドスローで147キロを投げたのである。そんなピッチャー聞いたことはない。

【次ページ】 フォームは変わったが投球術が変わっていない一二三。

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