野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
NPB発表の「最高の試合」もいいが、
面白すぎる少数意見も見逃すな!
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2010/08/16 12:20
「監督・コーチ」枠のランキングに昭和の香り漂う。
ただ、サイト上には「総合ランキング」のほかに、「監督・コーチ」、「選手」、「球団」別のランキングも用意されている。ベテラン野球ファンは「監督・コーチ」を見るのがいいだろう。ここでは2位に「10・19」、3位には'91年の「カープ優勝決定ダブルヘッダー」がランクイン。また、ランキング外でも「長嶋茂雄引退試合」(ヤクルト・小川監督代行など)、「江夏の21球」(広島・内田順三コーチなど)、「近藤真一新人ノーヒットノーラン」(西武・大石コーチ)など、懐かしの試合が挙がっている。
また球団別ランキングでは、広島「優勝決定ダブルヘッダー」、オリックス'96年「イチローサヨナラ優勝決定ツーベース」、横浜'98年「10・8甲子園」、ロッテ'05年「日本シリーズ第4戦」と、贔屓チームのファンには忘れ難い“あの日の試合”が名を連ねる。それらの試合はスコアも挙がっているので、当時のメンバーを眺めながら最強チームの思い出に浸り、現実逃避なんてことも可能である。
“あの選手”だけの「最高の試合」が味わい深い。
この「最高の試合」をランキングだけで終えてしまうのはもったいない。監督・コーチ・選手のコメントをひとつずつ読んでいくと、その選手の性格なり、目指しているものなり、チーム内での人間関係なりが見えてくる気がして、実に興味深い。印象に残った選手のコメントをいくつか抜粋してみよう。
●'77年9月3日 巨人vs.ヤクルト 「王貞治756号」
「ホームラン世界記録を更新した試合。同じ台湾出身の大先輩だから」(中日・チェン)
●'86年10月27日 日本シリーズ第8戦 広島vs.西武 「秋山、ホームランでバク転ホームイン」
「野球にバク転が存在した衝撃的瞬間」(ヤクルト・土橋コーチ)
●'89年10月26日 日本シリーズ第5戦 巨人vs.近鉄 「原の満塁本塁打」
「3連敗後の4連勝という偉業に、チームの主砲が勢いをつけたから。自分も球場で観戦していた」(巨人・高橋由伸)
●'07年8月11日 中日vs.巨人
「兄(堂上剛)のサヨナラホームランが、自分のことのように嬉しかった」(中日・堂上直)
●'05年9月22日 ロッテvs.ソフトバンク 「初芝の引退試合」
「死球を当ててしまった」(中日・三瀬)
●その他
「阪神vs.巨人。巨人・斎藤選手の『阪神キラー』ぶりが忘れられません」(阪神・藤川球児)
「伊藤智仁投手(ヤクルト)の投げた試合全て」(オリックス・本柳)
「松井vs.今中。どの試合ということではなく、この二人の対決は面白かった」(ヤクルト・橋本)
「吉村選手が栄村選手と激突して、左膝靱帯断裂した試合」(広島・青木勇人)
「特に印象深い試合はありません」(楽天・有銘)
どうだろうか。「あんな試合もあったなぁ」と記憶を蘇らせる名試合もあれば、当人以外誰も覚えてなさそうな試合、「その試合が本当に最高の試合なのか?」と言いたくなるものまで、選手たちの“最高”の定義がバラバラすぎて面白い。
万人が認める「最高の試合」も素晴らしい。だが、指揮を執る監督やコーチ、実際にプレーをする選手、また試合を観る観客一人ひとりがそれぞれの定義に当てはめた自分だけの「最高の試合」を持てることも、それはそれで羨ましいことである。
今日の試合も誰かにとっての最高の試合となるだろう。