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母の想いとともにリオを目指す。
体操・笹田夏実、再挑戦の第一歩。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAFLO

posted2013/05/20 10:30

母の想いとともにリオを目指す。体操・笹田夏実、再挑戦の第一歩。<Number Web> photograph by AFLO

全日本選手権で初優勝した笹田夏実。母の弥生さんは全日本選手権を3度制しており、親子制覇となった。

得意の平均台で冒した痛恨のミスでロンドン五輪を逃す。

 そして笹田は、ロンドン五輪代表への切符を目前にしていた。全日本選手権とNHK杯の4日間の合計得点上位5名が代表になれるという仕組みの中、笹田は、2つめの大会、NHK杯初日を終えて2位。最終日によほどのことがなければ、5枠ある代表入りは堅いと見られて迎えた2日目。

 笹田は、思わぬミスをする。得意の平均台で両手を付くミスを犯したのだ。最終種目のゆかでも、最初の着地でラインを割ってしまう。

 終わってみれば、6位。

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 笹田は大会が終わったあと、試合場の裏手で長時間にわたって座り込んだ。関係者に声をかけられても動けずにいた。その姿にショックの大きさが表れていた。

 ようやく立ち上がった笹田は言った。

「(平均台で)落選したくないと思ったら手を付いてしまいました」

 涙を流していた。

悲願の五輪出場のためにも、世界選手権の切符を手中に。

 NHK杯の2カ月後には右手首を手術することになった笹田が、本格的に気力を取り戻したのは、テレビで観戦したロンドン五輪だった。仲のよい同級生の寺本明日香の姿に、「自分もあの舞台に立つ」という思いに駆られたのだ。

 その後、笹田は練習に取り組む姿勢も変わっていったという。失敗すると悔しさからその場で涙を流すのが常だったが、最後まで通して演技するように心がけた。

 それまで教わっていた外国人コーチが帰国するなど、指導体制の変化もあった。だが、なによりも、日々の練習での小さな積み重ねの成果が、全日本選手権初優勝だった。

「ミスしても立て直せるようになりました」

 笹田はそうコメントしている。

 ただ、あの悪夢をほんとうに払拭するには、今後が勝負となる。

 個人総合、種目別で行なわれる今年の世界選手権の女子代表枠は4。全日本選手権と6月のNHK杯の総合成績によって、個人総合の代表枠1が決まり、残りは6月の全日本種目別選手権を経て決まる。

 オリンピックへの再挑戦の一歩を華やかに飾ることになった笹田が、世界選手権の切符を手にすることができるか。日本女子の地力向上のためにも、笹田の成長は重要であるだけに、注目の6月の2大会である。

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