Sports Graphic NumberBACK NUMBER

<スモールクラブのJ1サバイバル術> サガン鳥栖の浪漫飛行。~“降格候補筆頭”躍進の秘訣~ 

text by

藤島大

藤島大Dai Fujishima

PROFILE

photograph byMiki Fukano

posted2012/11/16 06:00

<スモールクラブのJ1サバイバル術> サガン鳥栖の浪漫飛行。~“降格候補筆頭”躍進の秘訣~<Number Web> photograph by Miki Fukano

指揮官の“命令”に、藤田が感じた解読不能のオーラ。

 運動量、セットプレーの精度、それに魅惑のロングスローで鳴るボランチでキャプテンの藤田直之は言い切った。

「あの時、あれだけ走ったから、いまがあると思います」

 2010年、尹は「ヘッドコーチ」の肩書きで実質の最高指揮を担った。S級ライセンス取得が間に合わず「監督」の資格がなかったための措置だ。自身は華麗なる技巧派であったのに、まるで妥協せず厳格な走り込みをさっそく課した。藤田のような新人はともかく、多数を占めた他クラブからの移籍組はとまどう。不満の声は噴出しなかったのか。

「尹さんがメニューを説明してから聞くんです。言いたいことは? その雰囲気でもう何も口にできない。まったく笑わず、真顔のままなんで」

 問答無用、解読不能のオーラ。一流の指導者の条件である。なにしろ、現在でもミニゲームに加われば「誰よりもうまくて、誰よりも負けず嫌い」(藤田)なのだ。

'11年に監督に就任して、尹が求めたのは「強烈なぶつかり合い」。

 翌'11年から正式な監督となるヘッドコーチは、チームづくりの段階を心得ていた。

「あの年は、豊田など新しい選手がたくさんいました。お互いのことを知らないわけです。だから強烈なぶつかり合いが必要だった。厳しい練習を乗り越える過程では、当然、反発心も出てきます。そうやって性格を知ることによって、その次の対応策もわかってくるわけです」

 目の前のゲームを疲労でとりこぼす危険もある。プロのアスリートであれば、すべての試合にベストの体調で臨みたいのは人情だろう。さりとて、そこに安住したのではスモールなクラブはスモールなままだ。追いかける立場にとって「快適」とは「停滞」と同義である。このあたりの按配が難しい。

「私も選手の生活については理解できます。その試合に100%の力を発揮したい。でも監督は違います。シーズン全体の計画と将来の見通しがある。あの時点では他に方法はなかったのです」

 猛鍛練の即効性は薄い。しばしば、成果は後年にズレる。今季の躍動の筋金は2シーズン前のハードなトレーニングなのだった。

理不尽なまでの猛練習を課し、韓国サッカーらしい激しさを求める尹監督。
バルサを愛しつつ、真似は決してせずに選手たちの個性を引き出す采配は、
ヒディンクから受けた薫陶と、Jリーグでの現役経験を生かしたものだった。
周囲は健闘を称賛するが、指揮官と藤田はある同じ思いを秘めていた――。
つづきは、雑誌「Number」816号、もしくはNumberモバイルでお読みください。
日本最強のベストナイン~BASEBALL FINAL 2012~
コメントする・見る

関連コラム

BACK 1 2 3

この記事にコメントする

利用規約を遵守の上、ご投稿ください。

サガン鳥栖
ユン・ジョンファン
藤田直之

Jリーグの前後のコラム

ページトップ