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志半ばで挫かれたマラガの野望……。
“首長”の変心に見る外資の危険性。 

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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posted2012/08/11 08:01

志半ばで挫かれたマラガの野望……。“首長”の変心に見る外資の危険性。<Number Web> photograph by AFLO

昨季終盤、リーガの試合を観戦に訪れたアル・タニ。このときはクラブのすべてが順調に運んでいたのだが……。

開幕直前に監督、強化責任者もチームを去る危機的状況。

 5月末に「気に入らない状況が日々積み重なった結果」としてゼネラルマネージャー職を辞任したフェルナンド・イエロに続き、7月末には昨年1月の就任後すぐにチームを立て直したスポーツディレクターのアントニオ・フェルナンデスもクラブを去った。さらにはチーム強化の根幹となるべきマヌエル・ペジェグリーニ監督も退団が濃厚だと言われている。

 つまりチームはリーガ開幕とチャンピオンズリーグの予選プレーオフを2週間後に控える今、強化責任者と監督、中心選手を根こそぎ失うという緊急事態に陥ったのである。

リゾート開発計画の頓挫がクラブ売却の決定打に……。

 ではなぜ、アル・タニは唐突にクラブ経営を放棄することを決めたのだろうか。

 アル・タニは6万5000人収容の新スタジアム「カタール・スタジアム」、総面積12万平方メートルの練習施設の建設といった環境の整備に加え、ヨーロッパ有数のリゾート地であるこの地域にホテルや商業施設などを多数建設し、マラガを世界的なスポーツリゾートとする計画を立てていた。地元紙『ディアリオ・スル』によれば、それらの建設計画が地方自治体や法律の規制によってことごとく阻まれたことがクラブ売却を決意するに至った要因だというのだ。

 確かにスペインにおける各種手続きは効率性に乏しく、非常に面倒で手間がかかる。それはこの国に来た者なら誰もが感じる事実だ。しかし、だからと言って「じゃあやめた」と手を引いてしまうのはいかがなものか。

 ラシン・サンタンデールの買収後に全く金を払わなくなったインド人実業家のアリ・サイヤドと同じく、結局アル・タニにも本気でマラガをビッグクラブに育て上げるという気概はなかった。

 興味があるから金を投じてみたものの、思っていた以上に面倒くさいし、何かと金を払えとうるさい。それは元々クラブともマラガの町とも何もつながりがない彼らにとって、経営から撤退するに十分な動機なのかもしれない。

「足長おじさん」に期待していてはリーガに未来はない。

 史上最悪の経済危機に苦しむ現状、サッカークラブの経営に私財を投じてくれるような太っ腹の富豪は国内には見当たらない。ゆえにいわゆる“外資”の登場はクラブにとって天の恵みであり、飛びつきたくなる気持ちも分かる。チェルシーやマンチェスター・シティなど、実際にヨーロッパ有数のビッグクラブへと成長した例もあるのだからなおさらだ。

 しかし、何の見返りも求めずに金を出し続けてくれる「足長おじさん」などそういるものではない。そんなものを期待している限り、スペインサッカー界に明日はない。実際、サッカー以上にスポンサー頼みの経営を行っているフットサル界などでは次々に経営難による強制降格やトップチーム消滅といった悲劇が生じている。

 1年前、本拠地ラ・ロサレダのファンは「ヘケ(首長)は俺達を裏切らない。だから俺達も彼を裏切らない」と歌っていた。だが結局、彼らはヘケに見捨てられた。

 見直すべきはスポンサー収入ありきの経営体制だ。今回のマラガの例は、各クラブが本気で自力での健全経営を目指すべき時が来ていることを示している。

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