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“正捕手のテーマ”を自分の応援歌に。
横浜・武山真吾が扇の要になる日。 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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photograph byHideki Sugiyama

posted2010/05/24 12:45

“正捕手のテーマ”を自分の応援歌に。横浜・武山真吾が扇の要になる日。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

「かっとばーせー武山 かーつぞーよーこーはーまー♪
かっとーばーせーたーけやまー それホームラーン♪」

 それは、小学生の頃に必死で覚えた懐かしいメロディだった。

 5月3日の横浜スタジアム、広島×横浜戦の2回裏。バッターに武山真吾を迎えたところで流れ出したその曲に、僕の記憶は一瞬で25年前に戻される。

 若菜だ。これは……若菜嘉晴、のちに中村武志に受け継がれた応援歌だ。

「Ob-La-Di, Ob-La-Da」はビートルズより先に屋鋪要で覚え、「大脱走」のテーマは映画を観ていなくても、パチョレックの曲として口ずさんでいた身としては、当時の曲を聴けば脊髄反射で当該選手の顔が浮かんでくる。

 しかし驚いたのは、若菜嘉晴、そしてのちに中村武志に受け継がれたこの名曲を、武山真吾が受け継いだことではない。キャッチャーの応援歌は「捕手用のテーマ」で全員統一されている横浜捕手陣において、武山が個人用の応援歌を得たということだ。

 即ちそれは、ライトスタンドが武山を正捕手として認めたという証なのではないだろうか?

“応援歌が欲しけりゃ結果を残せ”

 私設応援団「横浜ベイスターズを愛する会」の団長・谷口雅也さんは言う。

「武山は以前から応援を意識している選手で、常々『皆と応援が一緒くたにされるのは嫌だ、いつか個人の応援歌をつけてもらえるような選手になりたい』と言っていました。でも、個人応援歌をつけるのって難しいんですよ。皆が納得する結果を残していないのに応援歌を作ると、『なんであの選手に応援歌を作って、この選手に作らないんだ』ってスタンドから不満が必ず出ますから。だから武山には、『まだ早いよ、結果を残してからにしろ』って言っていたんですよ」

“応援歌が欲しけりゃ結果を残せ”

 その言葉に奮起したのかどうかは知らないが、武山は結果を残した。

 今季の武山はスタートこそ二軍だったが、4月2日にランドルフとの相性を買われて一軍に昇格。橋本の離脱により4月24日からスタメンに定着すると、以降は4月25日に勝ち越しの三塁打でプロ入り初のお立ち台、4月30日には、プロ入り初本塁打となるスリーランを叩きこむなど、8試合で6勝2敗。打率も3割台をキープするなど、目を見張るほどの活躍を見せた。

「ホームランを打った日ですね。武山から『曲は中村武志さんのがいいです』と連絡がありました……。シーズン中に応援歌を作るって滅多にないんですけど、出すタイミングとしては文句はありませんでしたからね。実際に球場でやってみても、ファンから不満も出ませんし、よく声も出ていますよ。そういう意味では、ファンにも認められたのかもしれませんね」

【次ページ】 オリジナルの新曲をリクエストしなかった理由。

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