プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ユーロ敗退はイングランドへの追い風!?
“弱いサッカーの母国”に革命を。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/07/08 08:01
ノルマであったグループリーグ突破を果たし、イタリアに屈するもポゼッションを志向した新たな方向性を示すことには成功したイングランド。真価が問われるのは2年後だ。
指揮官が描くイングランドを一変させる「革命」の絵図。
ボールを持てなかったのは、引いて守る戦術の影響もあるが、ホジソンを責めることはできない。持ち駒が限られていた上、チーム作りの時間が1カ月もなかった新監督にすれば、自身のポリシーでもある堅守優先が最善策だった。根本的な問題は、貴重なカウンターの機会にもロストボールが目立った技術レベルにある。「(強豪国との)ギャップを埋めるには、改善に取り組むしかない」と真顔で語り、「革命」という言葉さえ口にした指揮官であれば、イングランドを、負け難いチームから勝てるチームへと変える構想を、既に描いているに違いない。
もちろん、一朝一夕にチームが生まれ変わるはずはない。まずは、4-4-2システムと堅守ベースはそのままに、マイボールを着実に生かし、カウンターの質を高めることに努めるべきだろう。幸い、この第1フェーズに必要な新世代は、既にプレミアリーグで頭角を現わしている。ジャック・ウィルシャー(アーセナル)は、昨夏からの長期欠場がなければ、今大会から中盤深部で攻撃の糸を引いているはずだった。MFにはクラブでもチームメイトで、EUROを経験したアレックス・オクスレイド・チェンバレンの他、トム・クレバリー(マンU)とジャック・ロドウェル(エバートン)がおり、後方にも、クリス・スモーリング(マンU)、フィル・ジョーンズ(マンU)、カイル・ウォーカー(トッテナム)と、足下に自信を持ち、攻撃面でも貢献できる次世代の代表DF候補がいる。
中盤を支配されやすい、4-4-2一辺倒からの脱却が急務。
第2フェーズは、新システムの確立だ。4-4-2は無効とまで言うつもりはないが、4-2-3-1のドイツにしろ、4-3-3のスペインにしろ、中央にMF3名の状況を作れる強豪との対戦では、センターハーフ2名が数的不利を背負い、敵に中盤を支配されるシステムとなる。イタリア戦でも、中央で3人目の存在となっていたアンドレア・ピルロを、実力以上に良く見せてしまった。終盤、ジェラードの足がつり、スコット・パーカーが疲労困憊でベンチに下がった自軍に対し、相手の中盤では、やはりベテランのピルロが、涼しい顔でパスを散らしていた。イングランドは、イタリアにとって戦い易いチームだった。
ルーニー低調の裏にも、システムの弊害があると見る。イタリア戦では、2列目まで下がってピルロをマークするように命じられていたようだが、出場停止処分で自業自得とはいえ、マッチフィットネス不足のFWには酷なタスクだった。また、敵が終始ボールを支配する戦況は、主導権を握る展開が常識のマンチェスターUの10番にとって、不慣れな環境だったとも言える。