野ボール横丁BACK NUMBER
再び目覚めようとしている斎藤佑樹。
原点に帰った姿を春季リーグで発見!
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2010/05/07 11:35
斎藤の大学生活は常にモチベーションとの戦いだった。
明大戦での交代は、先発投手のプライドを考えたら、致命傷になりかねないとさえ思った。だが、斎藤に、投げることに対する執着や喜びを思い出させたという意味では、これ以上ないショック療法になったのかもしれない。
斎藤の大学生活は、振り返れば、モチベーションとの戦いだったといっていい。
高校3年生の夏、これ以上ないというほどドラマチックなシナリオで全国の頂点に立ち、早大でも大学1年生のときに、エースとして、いきなりリーグ春秋連覇を達成。大学選手権でも優勝を経験した。しかも、大学選手権ではMVPを獲得し、秋のリーグ戦では防御率1位で、ベストナインにも選ばれた。わずか1年半で、両手に抱えきれないほどの栄誉を手にしてしまった。
これからいったい何を目指せばいいのか――。
しかし、そんなモラトリアムの中にいるうちに、投手としての技量が鈍り、さらに投手としてもっとも素朴な感情まで失ってしまっていたのではないか。
ドラフトを控えた今年、春のリーグ戦も残り2カードしかない。これから斎藤の調子が劇的によくなるということはないだろうが、それよりも何よりも、投げる喜びに目覚めた斎藤の投球に注目したい。