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快進撃カターニャは残留決定目前。
森本貴幸の完全復活はあるのか?
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2010/04/24 08:00
4月18日に行なわれた第32節シエナ戦、森本は先発出場を果たすも、ゴール前でのチャンスを生かせず。試合は2-2の引き分けに終わった
シチリア島のカターニャは、もう初夏を思わせる陽気に包まれている。一時は絶望かと思われていた4季連続セリエA残留が目の前にある。町はひと足早いバカンス気分だが、FW森本だけがそのお祝いムードの外にいるようだ。
今季前半戦の間、前監督アッツォーリに重用された森本は、ゴール前でのチャンスでミスを連発し、再三の勝機を逸する原因となった。
カターニャはローマやミランと違い、ゴール前で10回も20回も好機を作れるチームではない。1回のチャンスが何倍もの重要度を持つ。不運な失敗を重ねるうちに、森本のプレーチョイスには必要以上に慎重さが加わり、いざというときに決めきれない悪循環に陥った。チームは最下位に沈み、12月初頭にアッツォーリが更迭された。21歳のエースFWには重圧がのしかかった。
監督交代後、カターニャは“ジャイアントキラー”に変身!
ミハイロビッチ監督を招聘したカターニャは後半戦、文字通り生まれ変わった。34節までの15試合を6勝7分2敗という驚異的なペース。インテル、フィオレンティーナ、パレルモなど強豪を次々に撃破するカターニャは、リーグ戦をかき回す“ジャイアントキラー”と化した。
最下位チーム大躍進の原動力となったのは、1月に加入したFWマキシ・ロペスだ。パワー、突破力、足技に秀でた本格派センターフォワードのマキシは、13試合で8ゴールと爆発。ホーム「マッシミリアーノ」のスタンドには「Vamos! Catania」とスペイン語で書かれた横断幕まで登場し、彼はすっかり地元ファンのハートをつかんでしまった。
森本をサブに置くミハイロビッチの戦力運用は理にかなったものだ。森本の最後のゴールは、2月28日にまでさかのぼる。途中出場したバーリ戦で、右サイドからスルーパスに反応し、スピードを生かしたゴール。紅潮した表情でゴール裏席へ一直線に向かい、鬱憤を晴らすように吠えまくった。
ミスを連発した森本は日増しに存在感を薄くしていき……。
3月中旬、森本はポジションを失った状況を冷静に振り返り、こう言っている。
「前半戦、自分が先発していた頃、ゴール前でたくさんのイージーミスをした。あの頃は精神的にもフィジカル的にもきつかった」
そして「シーズン残り試合、プレーするかぎりは自分の持っているものを全部出したい」と言葉を続けた。しかし、歴史的勝利となった3月12日のインテル戦や、4月初旬のシチリアダービーでも森本の出場はなく、その存在感は日増しに薄くなっていった。