プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人の宮國椋丞は本物なのか?
若手投手が一軍入りする必要条件。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/03/04 08:01
宮國は沖縄・糸満高校出身の19歳。昨季はイースタンリーグで4試合に登板し3勝、自責点は0。今年のキャンプでも紅白戦やオープン戦で無失点を続け、初の一軍ローテ入りが期待されている
昨年の中日・谷繁元信捕手の盗塁阻止率2割7分は、セ・リーグ6球団の主戦捕手の中で第5位の数字だった。
かつては強肩で鳴らしたベテラン捕手も、年齢を重ねるごとにそのスローイングには衰えが見えてきている。
もちろんベテランらしく、肩の衰えは、配球を工夫し、捕球からスローイングまでの時間を短くするなど技術面でカバーしてもいる。だから何とかこの数字を維持している、というのが実情でもあるのだ。
投手のボールを捕球してから送球するまで、谷繁は自分の肩の弱さを補うために余計な動きを切りつめられるだけ切りつめている。それでも簡単に盗塁を刺せるわけではない。
だから投手の助けが必要になってくる。
昨年まで中日投手陣をあずかっていた森繁和コーチが、投手たちに必要条件として求めたのが、実はこの盗塁阻止の技術だった。
「ウチのピッチャーには、クイックができないヤツは使わないって言ってある」
160kmの剛速球と落差30cmのフォークだけでは一軍投手たり得ない。
走者を出したら投手は牽制で走者を塁に釘づけにして、クイックモーションで投球する。この投手の協力があるからこそ、谷繁は何とか2割7分の阻止率を維持できていると言える。しかし視点を変えてみると、バッテリーがこの2割7分という数字をキープしていることが、防御率2.46でリーグ1位という中日の成績にも結びついていることが分かる。
投手とは投げるばかりではない。
極端に言えば、160kmの剛速球を投げ、落差30cmのフォークボールを持っているだけでは、決して一軍の投手としては使えないということだ。
いくらいいボールを投げても、バント処理などのフィールディング、牽制、クイックでの投球など、走者を出した時に相手にスキを与えない動きがどれだけできるか――それができない限りは、ただの投げる人でしかない。そういう投手は一度、四球で走者を出そうものなら、それが二塁打にも三塁打にもなり、1点を守り抜く“落合野球”ではそれが致命傷にもなりかねない、ということなのだ。
だから森コーチは、口を酸っぱくして、投手陣にはクイックや牽制をきちっとできるようになることを求め続けたのである。