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ヒョードルvs.石井慧は世間に届くか?
格闘技界の命運握る、大晦日決戦。 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph bySusumu Nagao

posted2011/12/19 10:30

ヒョードルvs.石井慧は世間に届くか?格闘技界の命運握る、大晦日決戦。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

11月3日に行なわれた『元気ですか!! 大晦日!! 2011』の記者会見。IGF会長で同大会ゼネラルプロデューサーを務めるアントニオ猪木(写真左)と笹原圭一DREAMイベントプロデューサーが顔を揃えた。当初はIGF対DREAMの対抗戦も構想されていたが、噛み合わないという理由で断念された

 今年の大晦日格闘技は、これまでとはまったく違う枠組みで開催される。

 大会名は『元気ですか!! 大晦日!! 2011』(さいたまスーパーアリーナ)。主催はDREAMとアントニオ猪木率いるプロレス団体・IGFによる実行委員会だ。昨年までの『Dynamite!!』とは違い、運営にK-1(FEG)はまったく関わっていない。TBSでの中継が前提になっているわけでもない。ただそれでも、主催者が狙うのはあくまで“世間”との勝負だ。

 単なる『12.31DREAMさいたま大会』なら、あえて大晦日に開催する意味はない。この1年、コアなファンに向けた好カードを組んできたDREAMだが、やはり大晦日は特別な舞台なのである。

それでもなお、アントニオ猪木に頼るワケ。

 IGFにはジェロム・レ・バンナ、ピーター・アーツ、長島☆自演乙☆雄一郎といった格闘家もレギュラー参戦しているが、プロレスと“混ざる”ことに拒否反応を示す格闘技ファンも少なくない。もちろん、DREAM首脳陣もそのことは予想できていたはずだ。

 にもかかわらずIGFと組んだのは、イベントのスケールを拡大し、話題を広く提供するためだろう。大晦日という特殊な“祭り”には、数多くのスポンサーを持つIGFの資金力と猪木というアイコン、つまり“顔”の力が必要だったのだ。

 13日には、追加カードとしてエメリヤーエンコ・ヒョードルvs.石井慧が正式発表された。このマッチメイクからも、世間との勝負というテーマを読み取ることができる。

ファンが持つ、ヒョードルへの特別な思い。

 昨年から今年にかけ3連敗を喫したヒョードルだが、格闘技ブーム全盛期のスターだっただけに知名度は抜群だ。石井も現役日本人格闘家としては数少ない世間に知られた顔。「ヒョードル、まだやってたの?」、「石井って弱いじゃん」という見方も含めて“伝わる”力のあるマッチメイクと言っていい。

 ましてヒョードルと石井はボビー・オロゴンやボブ・サップに代表される、かつてのような“テレビ用キャスティング”ではない。日本人ファンのヒョードルに対する思い入れは相当なもの。それは3連敗という“落日”によって、さらに濃いものになっているのではないか。「日本で見られるのは最後かもしれない」という気持ちで会場に足を運ぶ人も多いはずだ。

 一昨年のデビュー戦は吉田秀彦に敗れ、昨年はバンナに苦戦した石井だが、それで見切りをつけるのはまだ早い。現在、石井はアメリカに長期滞在中。UFC参戦を目標に“本場”の練習環境で世界基準のMMAファイターになるべく腕を磨いている。

 格闘技としての濃さと、世間に対する起爆力。その両方をギリギリのところで兼ね備えたカードがヒョードルvs.石井なのだ。

【次ページ】 “近未来の世間”という新たなマーケットの開拓。

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