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松井秀喜不在のヤンキースのその後。
新たな救世主の名はグランダーソン。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byGetty Images

posted2010/03/30 10:30

松井秀喜不在のヤンキースのその後。新たな救世主の名はグランダーソン。<Number Web> photograph by Getty Images

2007年にはデトロイト・タイガースで「20盗塁・20二塁打・20三塁打・20本塁打」という偉業を、メジャー史上3人目として達成しているグランダーソン。走攻守の三拍子が揃った万能選手である

 ニューヨークのみなさん、松井がいなくなって、寂しいか!

 日本人としてはニューヨーカーに、そんな質問をしてみたくなる。

 あなたの街のヤンキースという球団は、ワールドシリーズMVPの松井秀喜をみすみす手放したんですよ。困るんじゃないですか? しかも左翼手のジョニー・デーモンまでいなくなったし。大丈夫なんでしょうか?

 たぶん、ヤンキース・ファンはこう答えるだろう。

 ヒデキがいないのは寂しいけれど、困りません! だって、カーティス・グランダーソンが来たんですから!

 そうなのだ。松井、デーモンがいなくなっても、ヤンキースはグランダーソンを獲得したことで外野をグレードアップしたと言えるのだ。

若返りやコストダウンなどを目指した今季の補強。

 昨季、ワールドチャンピオンに返り咲いたヤンキースの課題は大まかに見て、次の3つだったと思われる。

  ・ エイジングが進んだ外野の再整備
  ・ 数年先を見込んだローテーションの再編成
  ・ コストダウン

 前回、コラムに書いた選手の守備力を示す指標、UZR(Ultimate Zone Rating)の視点からすると、過去数年間ヤンキースの外野の守備力は衰えつつあった。それは松井、デーモンがベテランの域に到達し、カバーできる範囲が少しずつ狭まっていたからだ。しかも松井は左手首を骨折してから、まったく守備機会がなく、再契約したとしても守備面ではマイナス評価にしかならなかった。

 ヤンキースのGM、ブライアン・キャッシュマンは「数字信奉者」だ。過去には出塁率にこだわって選手を補強したりして、それがジョー・トーリ前監督との衝突の原因になってしまった。

 今季に向けての補強を見ると、キャッシュマンは流行のUZRを補強の中心に考えたように見える。

 つまりヤンキースは、守備に不安のある松井、デーモンには大金を払う価値がないと思っていたのだ(しかしDHの松井には期待していたと思われる。松井がエンジェルスとの契約を決めた後、あわててニック・ジョンソンと契約したからだ)。

 そこで浮上してきたのが、グランダーソンである。

松井やデーモンと比べて圧倒的に広い、その守備範囲。

 グランダーソンは俊足の中堅手。個人的には、リスクを取る守備をしがちなので見ていて怖い面があるが(前方の打球に対しては思い切り突っ込んでくるタイプ)、年齢は29歳になったばかりで松井、デーモンと比べればカバーできる守備範囲は圧倒的に広い。

 特にヤンキー・スタジアムは昔も今もレフト側が広いから、グランダーソンのような足の速い選手がいれば、GMのキャッシュマンとしても安心して外野を任せられるはずだ。

 さらにベテランだとケガのリスクも増えるが、まだ20代のグランダーソンならばリスクの軽減にもなるし、向こう数年の選手編成のメドも立つ。

 さらに大きいのは、グランダーソンはまだ年俸が上がり始めたばかりの選手なので、コストカットにつながるということだ。

【次ページ】 グランダーソンはヤンキースの全ての問題を解決した。

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