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世界最強チームに学ぶ、
組織の「強さ」と「脆さ」の鍵。
~日本vs.オールブラックス戦の前に~ 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2011/09/08 06:00

世界最強チームに学ぶ、組織の「強さ」と「脆さ」の鍵。~日本vs.オールブラックス戦の前に~<Number Web> photograph by Sports Graphic Number

『オールブラックスが強い理由 ラグビー世界最強組織の常勝スピリット』 大友信彦著 東邦出版 1429円+税

長くW杯での栄光から遠ざかっているのはなぜか?

 10年間ニュージーランドでプレーした経験を持つパナソニックの田邉淳は、危険なタックルを浴びた自分のために相手に反則をやり返したチームメイトの姿を鮮明に覚えている。そのとき、「オールブラックスの強さは仲間意識の強さ」と実感したと言う。このような「発見」がちりばめられていることも、読み応えとなっている。

 数々の栄光を手にしてきたオールブラックスはしかし、ことワールドカップにかぎっては、'87年の第1回大会を最後に、一度も頂点に立っていない。前回の'07年はベスト4にすら残れなかった。優勝候補にあげられ、本命視されることも少なくないのに、優勝に届かないのはなぜか。選手らがそれぞれの立場から寄せる答えには、どこか共通するトーンがある。ラグビーへの思いが強いからこそ生じる「重圧」だ。それが正しいなら、今月9日から母国で開催される今大会でも、彼らはきっと苦しむことになる。それを乗り越えられるかどうかが栄光を手にすることができるかどうかの分かれ目となる。

 そして、オールブラックスの誇りが身に染みついているカーワンは、日本代表に何をもたらそうと努め、それは大会でどのように体現されるのか。ワールドカップで2度目の日本とオールブラックスの対戦はいかに――。読み終えた今、ますます、開幕が楽しみになってきた。

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