野球善哉BACK NUMBER
真弓監督が取り組む“微妙な変革”。
~「ダメ虎」にはまだ早い!~
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byToshiya Kondo
posted2009/06/09 06:03
守護神・藤川依存からの脱却が阪神浮上の鍵だ。
もともと、セ・リーグはクローザー偏重傾向にある。昨シーズンのセーブベスト5はすべて30を超え、5位の林昌勇(ヤクルト)の33はパ・リーグのセーブ王・加藤大輔(オリックス)と同じ数だ。その分、パ・リーグは、完投数がセ・リーグを大きく突き放しているわけだが、セ・リーグのなかでも、もっともクローザーに依存してきたのが阪神である。守護神に頼り切り、その影響の一つとして先発陣の一本立ちが遅れていたことも否定できない事実であったのだ。
藤川がまだ本調子ではないが、彼の調子が戻ってくれば阪神には責任ある先発陣と絶対的守護神という勝ちパターンを得ることができるのだ。藤川の疲労を軽減しながら、先発が持ちきれなくなった時は藤川の救援を仰ぐ。そういう戦いができた時に、ここ数年来続いている「シーズン終盤の勝負弱さ」が消えてなくなるはずだ。
とはいっても、真弓監督は先発投手をすべて、どの展開でも、我慢強く長いイニングを投げさせているわけではない。“ゲームを作れている”時に限りだ。1勝するまで我慢強く続投させてきた久保を、6月2日の楽天戦では4回で降板させている。逆転した直後に四球から再逆転を許すなど空気を乱すピッチングをしたからだ。そういう場合は容赦ない。
それが開幕からの真弓采配の芯であり、去年からの変革である。
次代の阪神を担う鳥谷の成長が阪神の命運を左右する。
一方で、これからは攻撃面が課題となっていく。昨チームで固定できなかった金本の後ろを新井に託す。次世代の中心選手になるべき鳥谷を核となる打順で使い、育成していこうというのが真弓采配から感じる今の方針だが、ブラゼルの加入を上手く作用させていきたい。
6月8日には名誉挽回と意気込んだ先発の久保が再び崩れて惨敗したが、その前の6月7日までは好調ソフトバンクを破り今季初の4連勝と勢いが出てきていたのだ。
「ダメ虎」というには、まだ早計である。