Column from GermanyBACK NUMBER
ヘルタ・ベルリンについて
text by
安藤正純Masazumi Ando
photograph byAFLO
posted2005/02/09 00:00
チェルシー、アーセナル、レアル・マドリード、パリSG、アヤックス、ベンフィカ、そしてローマ。最後のローマだけは「ちょっとなぁ…」だけど、あとはすべて強豪チーム。さて、その共通項は――。
首都のチームということである。だいたい世界中どの国、どのスポーツでも、首都のチームは国内最強というのが相場だ。例外は日本くらいだが、どっこい、ドイツもそうだった。
首都ベルリンの人口は350万人、2位のミュンヘン130万人を大きく超えている。面積だって東京23区の1・5倍ある。規模、歴史、文化、どれをとっても欧州を代表する大都市。
なのに、である。ベルリン1のクラブと言われる『ヘルタBSCベルリン』の何と影の薄いことか。
クラブ会員数は97年まで2000人にも満たなかった。同年、ブンデスリーガに再昇格してから激増したが、それでも現在1万2000人である。バイエルンの9万6000人、ドルトムントの4万1000人に遠く及ばない。
タイトルはといえば、リーグ優勝が2回と、リーグカップが2回。しかしリーグ優勝は75年前のことだし、リーグカップはまるで権威のない大会である。
「これではいかん」ということで数年前、『Ufa』社が乗り込んできた。Ufaとは、ドイツ最大のメディアコンツェルン『ベルテルスマン』傘下のマーケティング企業。数年以内にチャンピオンズリーグ出場の常連になるのが彼らの目標だ。
当初は「夢みたいな話」だったが、徐々に布石が打たれてきている。選手との関係が最悪だったステフェンス監督を解雇、代わりにベルリンと縁が深いファルコ・ゲッツ監督を起用した。ゲッツは来月で43歳の若手。現役時代はブンデスリーガ242試合に出場、46点を記録。プロの酸いも甘いも経験している。以前もヘルタで、プロとアマ両方の監督を務めたことがある。シャルケ04のラングニック監督ほどの衝撃はないが、ステフェンス時代よりチームは確実に良くなっている。
それを象徴するのが骨折から立ち直ったマルセリーニョの完全復活であり、今季入団したジルベルト、バストュルクの活躍だろう。19節時点でリーグ7位だが、これは引き分けが多いから。負け試合3つは、首位バイエルンと同じ数で最少。つまり、今季は際どい試合を落とさなくなったというわけである。
こうなるとファンも正直なもの。昨季の平均入場者数4万514人は、今季前半27%も増加。一気にリーグ6位の“人気チーム”になった。
ヘルタはこれから、首都に相応しいチームへと変貌するのだろうか?残念ながら無理な話である。彼らにはまず大物選手を獲得するだけの資金が絶対的に足りない。フロント、ユース、スポンサー、マーケティング、戦略……、およそすべての分野でバイエルンに太刀打ちできない。
それをいちばん良く知っているのはヘルタのGMであろう。なにしろバイエルンのヘーネスGMの実弟なのだから。