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森祇晶+王貞治=秋山幸二監督?
外野手出身監督は成功するのか。
text by
田端到Itaru Tabata
photograph byShigeki Yamamoto
posted2009/07/21 12:45
外野手出身の監督に名将なし――。そう言い切るのは偏見が過ぎるだろうか。
日本プロ野球の歴史で「名将」とうたわれた監督は、その多くが捕手出身者と内野手出身者で占められている。森祇晶、野村克也、上田利治らが捕手出身、仰木彬、広岡達朗、古葉竹識らが内野手出身。また、ここ数年の優勝監督を見ても、梨田昌孝、伊東勤が捕手出身で、岡田彰布や原辰徳は内野手出身だ。ちなみに、もっとさかのぼれば、川上哲治、西本幸雄、三原脩、水原茂、鶴岡一人らの大監督も内野手出身だった。
プロ野球史を30年遡っても、外野手出身の優勝監督は3人のみ。
これに対して、外野手出身の監督は分が悪い。若松勉(01年ヤクルト)、山本浩二(91年広島)、大沢啓二(81年日本ハム)……。30年さかのぼっても、優勝監督は3人だけ。優勝回数はいずれも1回。
2回以上優勝した人は見当たらない。前・日本ハム監督のトレイ・ヒルマンはマイナーリーグで数年間、外野手としてプレーしているが、除外してもいいだろう。
内野から外野にコンバートされた、ある選手がこんなことを言っていた。
「内野手は1球1球サインを確認し、投手が投げるたびにかかとを上げて守備体勢をとる。すごく大変なんだ。でも、外野手はめったに球が飛んでこないし、守備の負担がすごく軽い。外野手は最低でも3割打つのがノルマだと思う」
好調ソフトバンクを率いる秋山監督は万能プレーヤーだったが……。
1球ごとに状況を読み、サインを出す捕手。それを確認して、守りの備えをする内野手。名将と呼ばれる監督に捕手と内野手出身が多いのは自然なことかもしれない。一方、選手としてのキャリアの多くを、外野という“遠い位置”で過ごした人たちには、指揮官として少なからずハンデがあるのだろう。
そんな偏見込みで注目しているのが、今年からソフトバンクホークスを率いている秋山幸二監督である。
現役時代はゴールデングラブ11度受賞の名外野手としても鳴らした、万能のプレーヤー。プロ入団当初は三塁手をつとめた時期もあったが、キャリアの大半は外野手だ。