「この状態でできることはすべてやりました」（浅田）

　一方で世界タイトルを守る立場で挑んだ浅田真央は、今年は調整がうまくできないまま臨んだ試合となった。SP、フリーともに3アクセルを跳んだが、いずれも回転が足らずにダウングレードと判定されて、総合6位。だがそれも覚悟のうえで挑んだのだという。

「四大陸の後、3アクセルの調子が落ちて、練習でも回転が足りたことは一度くらいしかなかった。でも試合で挑戦しなければ、自分が納得できないと思ったので」

　演技後にそう語った浅田は、以前よりも一回りほっそりして見えた。

「2アクセルにするか、3アクセルにするか、本当に悩みました。でも2アクセルにさせたら、士気が下がるだろうと思ったんです」佐藤信夫コーチは、そうコメント。

　佐藤コーチのもとに浅田真央が移ってから、まだ半年あまりが経過したばかり。少しずつ様子を見ながら、技術を修正していっている途上である。

「来シーズンに向けて、スケーティングの基礎からまたしっかりとやり直していこう、と先生に言われています」

　でもその前に、と浅田は言葉を続けた。

「今シーズンは長くて本当に大変だったから、日本に戻ったら少し休みたいです」

　五輪後、1年休みをとったキム・ヨナに比べて、浅田が疲れているのは当然のことだ。ひたすらひたむきに、前に進んでいく彼女にとってこの“13カ月シーズン”はさぞ長かったことだろう。

「不調だったけれど、この状態でできることはすべてやりました」

　本来だったらすでにオフシーズンにはいっていた5月1日。

　モスクワ世界選手権はこうして幕を閉じた。