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ロッテで活躍中のブラジル人通訳はなぜ「サッカーではなく野球」に熱中した? 運命を変えた1本のコメディー映画と“日本愛”のストーリー

posted2024/05/08 11:03

 
ロッテで活躍中のブラジル人通訳はなぜ「サッカーではなく野球」に熱中した? 運命を変えた1本のコメディー映画と“日本愛”のストーリー<Number Web> photograph by Chiba Lotte Marines

お立ち台でポランコ(右)の喜びの言葉を訳すフェルナンデス通訳

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梶原紀章(千葉ロッテ広報)

梶原紀章(千葉ロッテ広報)Noriaki Kajiwara

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Chiba Lotte Marines

 ブラジルではお昼の時間帯にテレビで映画が放送されている。日本でいう「金曜ロードショー」のお昼版のようなものだろうか。

 小学校は午前の部と午後の部に分かれており午前の部だとお昼には学校が終わるため、子供たちの多くはこの時間帯に自宅に戻って映画を見るというのが日常的な風景の一つだ。お昼はブラジル人にとってはちょっとリラックスする時間なのだ。

囚人が刑務所を抜け出して...

 現在、千葉ロッテマリーンズで通訳兼打撃投手を務めるラファエル・フェルナンデスも子供の時には家で映画を楽しむ時間が好きだった。サンパウロ市内の自宅リビングで、ある時、2歳年下の妹と2人、偶然、1本のアメリカ映画に出会った。

「Taking Care of Business」。邦題は「ファイロファックス トラブル手帳で大逆転」。ジェームズ・ベル―シ主演の1990年の作品だ。

 野球好きの囚人がワールドシリーズ見たさに刑務所を抜け出しスタジアムで試合を観戦する。そこで、たまたま金持ちの大事な手帳を拾ったことから話が膨らんでいくというストーリーのコメディー映画だ。日本では劇場未公開の作品だがビデオで見ることが出来、非常に評判のいい作品である。フェルナンデスはこの映画をたまたま自宅で見た。当時、8歳だったという。フェルナンデスが振り返る。

「それがまさに野球との出会い。ああ、こんなスポーツがあるのだと思いました。内容的にはワールドシリーズに進出したカブスの試合をどうしても見たくて脱走したのだけど、外野席で偶然、ホームランボールをキャッチしたことでビジョンに映ってしまって、ヤバイぞと逃げるというようなお話。脱走するという危険を冒してまで見に行きたくなる野球というのはどんなスポーツだろう、と興味を持ったんです」

サッカーには熱中できず

 ブラジルであるから、当然、野球に接する機会はほとんどなく、スポーツといえばサッカーが中心だ。父親もサッカーが大好きで、プロ選手にこそなれなかったが一歩手前のレベルでプレーしたストライカーだった。それでもフェルナンデスはどうしてもサッカーに熱中できなかった。なにか自分も夢中になれるスポーツはないかと探し、バスケットボールをしていた時期もあった。そんな時、この映画に出会い野球というスポーツを知った。それから2年が過ぎた10歳の頃、転校先で日系ブラジル人のクラスメートたちと出会う。それが少年の人生を変えることになった。

「彼らがたまたま野球をやっていたのです。その時、あの映画を思い出しました。なぜか頭から離れることがなかった映画。2つの偶然が重なってボクもやってみたいと思ったのです」

【次ページ】 ヤクルトアカデミーの門を叩き…

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