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巨人「スガコバ」復活で防御率0.44…菅野智之34歳のために「直近5年の通算打率.116」同い年の小林誠司は“もう少し打てる捕手”となれるか 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2024/04/23 11:01

巨人「スガコバ」復活で防御率0.44…菅野智之34歳のために「直近5年の通算打率.116」同い年の小林誠司は“もう少し打てる捕手”となれるか<Number Web> photograph by Kyodo News

「スガコバ」こと菅野智之と小林誠司。巨人ファンに愛されるバッテリー継続のためには、やはり小林の打撃がカギとなる

 昨年の小林は一軍の試合にはわずか21試合に出場、安打は1本だけ。そろそろキャリアも終わりかと思われたが、今季、菅野と組んで好成績を残したことで、息を吹き返しつつある(ただし今季も18打数2安打の打率.111と「専守防衛」に変わりはないが)。

 阿部慎之助監督は、デビューしたての菅野の球を受けた捕手であり、その後一塁に回って小林と菅野のバッテリーを見続けていた。小林のリードの機微や、キャッチング、肩の良さなども十分にわかっていたはずだ。

 菅野の伯父である原辰徳前監督は「菅野と相性のいい小林」よりも「打てる大城」との組み合わせを優先した。ただ、当時の阿部コーチは菅野を再生させるためには小林の存在が依然として必要――と考えたのかもしれない。

阿部ら「打てる捕手」の一方で「エース専用捕手」も

 プロ野球において「打てる捕手」ほど重宝する存在はない。本来、捕手は守りの要であり投手をリードする役割だ。打撃の方は半ば目をつむって、下位打線に置いて「つなぐ打撃」に期待する程度の存在である。

 だからこそ、ごくたまに打撃の良い捕手が出現すると、チームにとってはまさに幸甚であり、攻守の要として重用することになる。野村克也、木俣達彦、田淵幸一、古田敦也、城島健司など「打てる捕手」は球史に名を残している。ほかならぬ阿部慎之助も、巨人史上最強捕手という評価がある。

 しかし「打てる捕手がすべての投手と相性がいい」とは限らない。むしろそういうケースの方がレアなはずで、特にエース級の投手の場合、主力捕手との相性がよくないために「エース専用捕手」を仕立てるようなケースがある。

 昨年まで、パ・リーグの絶対的なエースだったオリックスの山本由伸は、若月健矢と組むことが多かった。もう一人の捕手、伏見寅威も若月と打撃、守備ともに遜色ない実力の持ち主だったが、昨年、西武から当代屈指の打てる捕手・森友哉がFA移籍したタイミングで、山本由伸とコンビを組む若月が残り、伏見がFAで移籍したのは「エース専用捕手」ではなかったからだろう。

 昨年は森友哉も2試合ほど山本と組んだが、最終的に山本は前年同様、若月とバッテリーを組んだ。事程左様に投手と捕手の相性は難しいものである。

 今年の巨人も大城をメイン、岸田を2番手としつつも小林を「菅野専用捕手」として起用するのだろう。それで菅野が再生するのならば、十分にメリットがあるからだ。それだけ小林のキャッチングの的確さ、そして盗塁阻止率の高さは特筆ものではある。

さすがに“菅野より低打率”では…

 ただ、それにしても「もう少し打てないものか」との思いは拭えない。

【次ページ】 直近5シーズンの打率.116の改善はなるか

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