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「伊東はこの街のスターなんだ」伊東純也は“シャンパンとフットボールの街”ランスで愛されていたのか?「うん、ナイスガイだったな」 

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豊福晋

豊福晋Shin Toyofuku

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2024/02/03 17:00

「伊東はこの街のスターなんだ」伊東純也は“シャンパンとフットボールの街”ランスで愛されていたのか?「うん、ナイスガイだったな」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

アジアカップ開催中に性加害疑惑が報じられた伊東純也。2月2日に日本代表チームからの離脱が発表された。昨年12月に所属チームのフランス「スタッド・ランス」にてNumberが現地取材し、伊東の評価を聞いていた

 中心部とスタジアムをつなぐ一本の橋がある。その手前にある飲み屋『キルベリー』はファンが集う場所だ。扉を開くと、中では赤いグッズをまとった男たちが、試合前の一杯を愉しんでいる。

 アイリッシュパブではあるが、ランスのそれはシャンパンを出す。店にはシャンパンボトルがずらりと並んでいる。ここではギネスは少数派だ。

 黒縁メガネをかけた物静かな初老の男がいた。首に赤いマフラー。醸し出す雰囲気から、すでに歴史が伝わってくる。確信を持って声をかける。ジェラール・ネペア、71歳。クラブの黄金期をその目で見た、今では数少ないファンだ。偉人の名が、次々と出てきた。

「昔、父が大聖堂の前でパン屋をやっててな。コパがよく買いに来たもんだ。バゲットを手にとって、何フランか置いて帰っていく、そんな世界だった」

 栄光の時代のランスには、世界的スターが多くいた。バゲットのコパに、ワールドカップ単独大会最多得点の記録を持つジュスト・フォンテーヌ。カルロス・ビアンチもいた。彼らの勇姿はジェラールの記憶の片隅にいまも生きている。

「あの頃の英雄たちはランスを欧州の舞台に引き上げてくれた。残念ながらチャンピオンズカップは勝てなかったが、ランスの名は世界で知られた。みんな、それが嬉しかった」

 歴史とともに歩んできた彼は現代のランスをどう見ているのか。

「今はお金がものをいう。ランスは地方クラブ。資金でPSGに太刀打ちできるわけはない。ただ、チャンスはある。伊東のような国際レベルの選手をもっと抱えることだね。いつかまたCLに出るチームを見てみたいものだが」

 スタジアムで会ったウニオン紙のジュリアン・コロン記者も現実を見ている。

「あの時代の栄光を取り戻すのは、率直に言って難しいと思う。CLに出るクラブとは資金力が違う。ただ、ビジネス面ではクラブはうまくやっている。伊東の獲得もそう。1000万ユーロほどで獲得したが価値はさらに高まっている。伊東のような選手を獲得していくことは、EL、その先のCLを狙うのなら欠かせないことだ」

「純也くんはチームで一番の選手です」

 クラブショップの店員は、ユニフォームの販売数は伊東が一番と話していた。大半は地元と国内での売上げだそうだ。ITOの文字と背番号入りで110ユーロ。クラブにとって重要な収入だ。記者は続ける。

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伊東純也
スタッド・ランス
中村敬斗

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