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「箱根駅伝は悔しいことばかりでした」櫛部静二監督の城西大が大躍進の3位…指揮官がチームに「もっと楽しく」を強調した“納得のワケ” 

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酒井俊作

酒井俊作Shunsaku Sakai

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photograph byL)Yuki Suenaga、R)Nanae Suzuki

posted2024/01/10 06:03

「箱根駅伝は悔しいことばかりでした」櫛部静二監督の城西大が大躍進の3位…指揮官がチームに「もっと楽しく」を強調した“納得のワケ”<Number Web> photograph by L)Yuki Suenaga、R)Nanae Suzuki

大躍進で大学史上最高順位の3位に入った城西大の櫛部静二監督(左)。6区を走った久保出雄太(3年)は同好会出身の異色の経歴

 櫛部の攻めの采配は往路の区間配置に表れていた。2、3区を1万m27分台で2年生の斎藤将也とヴィクター・キムタイに託し、5区に前回区間賞で「山の妖精」の異名をとる山本唯を置く。5人中、4人が1年前も往路を走っており、同じ区間を託す盤石の布陣だ。

 1区の野村颯斗(4年)の区間3位の好走で勢いをつけ、2区で順位を落としたもののキムタイで再び3位まで浮上。山本唯は区間新の快走で後続を離した。

 復路は辛抱強さが試された。6区スタート時点で、2位駒澤大とは39秒差で、4位東洋大との3分49秒差は1kmを優に超える大差である。周りに他校の選手がいない単独走は、ランナーの地力が問われる。

 櫛部が「もともと強い選手たちではなくて集団の力で強くなってきた。特に後ろは4分近く空いて、前も見えない状況が続いたので苦しかったです」と話したように、復路は12位と苦戦したが、粘り切って一度も抜かれなかった。

キーマンは「同好会出身」の叩き上げ

 キーマンの一人が6区の久保出雄太(3年)である。山下りで大きく躓けば、襷を受けるメンバーの士気にも関わる。だが、久保出は大きなストライドのフォームでグングンと前に進み、一時は前を走る駒澤大とのタイム差を縮めて見せ場も作った。

 3大駅伝初出場の久保出に重圧がかかる6区を任せたのは、指揮官に、ある確信があったからだ。

「久保出は一人でできるんです。6区は運営管理車が外れる場面が一番長い。彼は私がいなくても走れる選手。意志が強いですし、信念を持って走っていますから」

 6区は運営管理車が合流するのは残り3kmの箱根湯本駅を過ぎてからである。それまでの17km以上を一人で走れる力が必要になり、櫛部は日々、久保出と接するなかで、その適性を見いだしていた。

 異色の経歴は強い意志の表れでもある。彼は石川・小松大谷高の2年生までサッカー部で、箱根駅伝を走るために城西大に入学してきた。当初は入部条件となる5000m15分以内のタイムを切れず、同好会で力をつけた。1年生の10月から練習参加を認められ、正式に入部許可が下りたのは2年生の4月だった。櫛部は振り返る。

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