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「ファイターとしての朝倉未来には乗れる。だが…」重要なのは強さではなくカネと知名度? モラルを失った格闘技界を覆う“破滅の予兆” 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph byRIZIN FF Susumu Nagao

posted2023/12/05 17:07

「ファイターとしての朝倉未来には乗れる。だが…」重要なのは強さではなくカネと知名度? モラルを失った格闘技界を覆う“破滅の予兆”<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

賛否の声を自らの“栄養源”として格闘技界の中心人物へと成り上がった朝倉未来。YA-MAN戦での衝撃的なKO負けを受けて「休養」を宣言した

 本来ならばRISEはYA-MAN軍団のホームリングなので、彼らに大きなブーイングが飛んでもおかしくはなかったのだが、アウェイでの作法を熟知しているかのような白川の一言によって、朝倉軍団は純粋なキックボクシングファンにも受け入れられた。全試合終了後、RISEの伊藤隆代表は「計量のときのトークでは(朝倉軍団に)全敗でしたね」と苦笑いを浮かべるしかなかった。

 慣れていないと言ってしまえばそれまでだが、同じステージに立った以上、言葉のキャッチボールをしなければ会話は成り立たない。朝倉軍団は口撃を繰り返すことで、プロとして大会を盛り上げようとしていたようにも思える。

会見で行われる暴挙「過激さの先には破滅しかない」

 朝倉未来はふたりいる。

 ファイターではない“もうひとりの朝倉未来”を目にしたのは、11月22日に都内で行なわれた『BreakingDown 10』の前日会見だった。会見場に姿を現した朝倉は、YA-MAN戦のダメージについて問われると「選手としての自分の仕事とBreakingDownのCEOとしての仕事は全く別物だし、皆さんに関係ない話なので全く問題ないです」と釘を刺した。

 そうした中、ある選手が対戦相手とのフェイス・トゥ・フェイスでフルスイングの往復ビンタを見舞った。朝倉はその様子を間近で目撃しながらも平然としていた。

 ビンタの映像を見たムエタイ戦士の梅野源治は、SNSで警鐘を鳴らした。

「会見や計量で対戦相手を殴れば それは当たり前に数字はとれる でも、それは法律&マナー違反 俺達が同じことやればもっと数字はとれるよ 悪い事するなって言ってるんじゃないの。ダサいことするなって言ってるの。って蓮MG(注:平本蓮)が怒りそう!!」

 同じ11月22日には、韓国で行なわれる格闘技イベントの記者会見で、BreakingDown出身の元自衛官が対戦相手の韓国人選手の頭に醤油をかけるという暴挙に出た。批判の声が上がっているのも当然だろう。ヘタをすれば、国際問題である。ビュアー数を稼げれば、話題になれば、何でもやるのか。過激さだけを追い求めた先には破滅の道しかない。

 格闘技界の強さと知名度のバランスは完全に崩れつつある。いってみれば、狂騒の時代である。もはやモラルを問いかけることはナンセンスなのか。

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