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「この俺が病室でつらくて泣いたりして…」天龍源一郎73歳が告白する“闘病生活”の真実…柴田勝頼に打ち明けた「(支えは)猪木さんの姿だね」 

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堀江ガンツ

堀江ガンツGantz Horie

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photograph byAtsushi Hashimoto

posted2023/12/03 11:01

「この俺が病室でつらくて泣いたりして…」天龍源一郎73歳が告白する“闘病生活”の真実…柴田勝頼に打ち明けた「(支えは)猪木さんの姿だね」<Number Web> photograph by Atsushi Hashimoto

闘病を乗り越えた天龍源一郎、柴田勝頼が語り合う対談が実現した

天龍 やっぱり、柴田くんも最初はそうだったでしょ?

柴田 はい。オカダ戦の試合後に動けなくなって、気づいたら病室だったんですよ。病室のテレビで浅田真央ちゃんが昨日引退したというニュースを見たんですけど、試合の次の日かと思ったら次の次の日だったんですよ。だから記憶が丸一日まったくない状態なんです。自分は集中治療室にいて、そこには患者が3人くらいいたんですけど、みんな死にかけていて。ゲホゲホして呼吸もままならないおじいちゃんがいたり、「これはヤバいな……」と思って。

天龍 俺も何度も救急車で運ばれて、そのたびに集中治療室で点滴打たれっぱなしだから気が滅入ってね。そこで寝たきりだと、夢なのか現実なのかわからなくなってくるんだよ。三途の川を見たような経験もしたしね。(ジャイアント)馬場さんが川の向こうで「こっちに来い! 葉巻に火をつけろよ」って呼んでるから、行きそうになったよ(笑)。

「心不全も併発して、危ない状況だった」

柴田 今年に入って、天龍さんが敗血症ショックで入院されたって聞いて驚いたんですけど、その時はどうだったんですか?

天龍 腎臓にばい菌が入って石が溜まったことで、毒素が尿として排出されずに身体じゅうが毒素でパンパンになったんだよ。その時も、三途の川みたいなわけのわからない夢を見たんだけどね。それで緊急手術になったんだけど、その時は心不全も併発して、危ない状況だったらしい。自分としては、そこまで悪いと思ってなかったんだけどね。身体のどこかしらかが痛い、苦しいっていうのは相撲時代から何十年もそうだから、当たり前になっていて気づかないんだよ。まあ、こんなもんだろうって(笑)。

柴田 痛みに慣れすぎてるんですね(笑)。

天龍 プロレスラーあるあるだよ(笑)。いまにして思うと、あれだけマットに叩きつけられて、殴られて、本来であれば試合後は身体を労らなきゃいけないのに、終わってシャワー浴びたあとすぐにビールを飲みに行ってるんだから大変だよ。逆のことをやってるんだからしょうがないよ(笑)。

柴田 身体に悪いことばかりですもんね(笑)。

天龍 それが今になって入院して寝たきりになると、1カ月程度で筋肉が衰えちゃうんだよ。でも、こんな状態でも杖をついて歩けていたのは、長年鍛えてきた筋肉のおかげみたいだからね。

柴田 自分が若手の頃にタイヤ押しっていうストレッチがあって、天龍さんの補助にも何回か付かせてもらったことがあるんですよ。その時、筋肉のカットが出てるのにすごく柔らかい筋肉をされていて、これはすごい筋肉だなって思ったんです。

天龍 ありがとう(笑)。

柴田 筋肉って固いものだと思ってたんですけど、すごく柔らかくて、それなのにカットもあるっていう。いい筋肉っていうのはこういうことなんだなと思って。

天龍 その言葉に騙されて俺は13歳で相撲界に入ったんだよ(笑)。「いやー、いい筋肉してるな。すごい横綱になるよ」って言われて入ったんだけど、当時は相撲が始まって以来45人しか横綱が出てないんだから、まともなら「いい加減なことを言うなよ」って思うんだろうけど、それを俺は信じちゃったんだよね。その筋肉も今ではすっかり落ちて、柴田くんのほうが遥かにいい身体をしてるのは癪に障るけどね(笑)。

【次ページ】 闘病中の心を支えたのは、アントニオ猪木だった

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