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「救急車!救急車!」元アイドルレスラー府川唯未が急性硬膜下血腫で倒れた日の真実…涙で語る、亡くなった門恵美子さん(享年23)への思い 

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伊藤雅奈子

伊藤雅奈子Kanako Ito

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2023/11/23 11:01

「救急車!救急車!」元アイドルレスラー府川唯未が急性硬膜下血腫で倒れた日の真実…涙で語る、亡くなった門恵美子さん(享年23)への思い<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

元人気女子プロレスラーの府川唯未。引退の原因となった2000年の大ケガについて振り返った

泣き崩れた父、コスチュームで駆けつけた仲間

――ICUには誰がいましたか。

府川 ぼんやりとしか覚えてないんですけど、(ロッシー)小川社長(現・スターダムのエグゼクティブプロデューサー)が母に連絡をして、母から父に伝えたとき、これはあとから聞いた話ですけど、父は泣き崩れちゃったらしく。実家から都内の病院に向かうとき、だと思います。母はきっと気丈に振るまっていたと思いますよ、母の性格上。両親が病院に着いてからは、お医者さんから「今夜が山です」と言われたと。「6時間で急変する可能性がある」って言われたと。大向(美智子)なんかは、コスチュームのまんま駆けつけてくれてましたよね。その光景も、なんとなくですけど覚えてますね。

――のちに、「もしも1ミリずれていたら……」と主治医から告げられたそうですが。

府川 よく映画なんかで、「1ミリずれてたら……」なんていうシーンがありますよね。私、ああいうのって映画の世界だと思ってたんですけど、ほんとにあるんですね。入院中に主治医からMRI(磁気共鳴画像)を見せていただいたときに、説明してもらったんですね。「これ、わかる? あと1ミリだよ。1ミリずれたここに傷が入ってたら、ダメだったよ」って言われて、サーッと血の気が引いた。「えっ……!?」って、青ざめたというか。脳って、右脳と左脳がXのような形で位置してるんですけど、私の場合はそれが血液で押されて、端っこにある状態だったんですね。開頭手術をしてないんですけど、それでも血が引いてくれていったので、徐々に戻っていったんでしょうね。

涙の告白…前年に逝去した門恵美子さんへの思い

――前年の99年には、デビューしたばかりの門恵美子さん(享年23)が逝去しました。その病名が急性硬膜下血腫およびくも膜下出血で、府川さんと同じでした。血の気が引いたのは、そのせいだったと思いますが。

府川 同じ病状で、なんで私は助かったんだろうって。プロレスが怖いとか、そういう気持ちになったわけではなくて、もうプロレスをやっちゃいけないんだって思ったんですね。もちろん、団体は絶対にやらせないでしょう。けど、自分の心情的な問題で、門のことがあって、同じ病名だってわかったときに、「もうやっちゃダメだな」って。自分は同じケガで助かった。それをこの先は、人に伝えていかなきゃいけないんだなって。これは、整理がついて時間が経ってから思ったことですけど。門は……。(声を震わせて)すごく苦しかった気持ちを……。伝えられずに……。ちょっ……。ごめんなさい……(大粒の涙を流す)。

――……。

府川 門は……。伝えられずに……。伝えられなくなっちゃったんで……。その状況とか、細かいことを私は伝えられるんだって。だから……。うーん……。自分はそういう、伝える役割だって思いました。門のことは、なかったことになってはいけないし。……そうですね。……ほんといえばね。ほんとのことをいえば……。自分もプロレスを続けたかった。

――……。

【次ページ】 「府川唯未のプロレスはもうできないなと思ったから」

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