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日本ハムからまさかの“強行指名”に「すぐに答えは出なかった」指名拒否でJR東日本に入社、履正社左腕が明かす決断の真相「プロは憧れの場所。でも…」 

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内田勝治

内田勝治Katsuharu Uchida

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posted2023/11/04 11:03

日本ハムからまさかの“強行指名”に「すぐに答えは出なかった」指名拒否でJR東日本に入社、履正社左腕が明かす決断の真相「プロは憧れの場所。でも…」<Number Web> photograph by KYODO

日本ハムにドラフト6位で指名され、球団側からの説明を聞く履正社時代の山口さん。本人の心中には「ある思い」があった

 10月初旬に行われた国体では4試合中3試合に登板し、優勝に貢献。寺島さんらと切磋琢磨した3年間を最高の形で締めくくることができた。

 一つの夢は叶った。もう一つの夢に向けて、寺島さんと同じタイミングでプロ志望届も提出した。ただ、練習参加したJR東日本の衝撃が、田嶋のうなるストレートが、脳裏に焼き付いて離れなかった。

「もちろんプロに行きたいという気持ちはありました。ただ、JR東日本も、野球に一日中打ち込めるし、環境はほとんどプロと変わらない。高校を卒業してプロに行くのか、社会人でもっと力をつけてからプロに行った方がいいのか、悩みましたね」

ドラフト4位以下であれば社会人へ進む

 プロとJR東日本。どちらにも魅力を感じていた山口さんは、調査書が届いた11球団に「ドラフト4位以下であれば社会人(JR東日本)へ進むので、指名を遠慮してもらいたい」という意向を伝えていた。

「プロに上位で行くにしても下位で行くにしても、活躍すれば変わらないとは思っていました。でも、下位指名だったら、社会人に行ってもっとレベルアップして力をつけたら、上位で指名されるんじゃないかという期待もありました」

 そして迎えた運命の10月20日。「高校BIG4」の一角としてドラフトの目玉だった寺島さんは、早々にヤクルトから単独1位指名を受けた。対して自分の名は、3位以内はおろか、4位でも呼ばれることはなかった。

「社会人だな」

 そう心の中でつぶやき、校長室の席を立った。

帰り支度を終えると…

「成輝はドラフト1位だと思っていたので、どこに選ばれるんだろう、くらいの気持ちで見ていました。その他の選手に関しては特に気にしなかったですね。自分の選ばれた順位が実力の順位だと思っていました」

 その「実力の順位」は、日本ハムのドラフト6位という形で評価されることになる。帰り支度を終え、校舎を後にする直前に、岡田龍生監督(当時、現東洋大姫路高校監督)からその事実を知らされ、慌てて踵を返し、せわしなく会見に応じた。カメラマンからは寺島さんとの喜びの2ショット写真をせがまれた。同僚たちに担ぎ上げられ、手をつなぎながら笑顔でガッツポーズをした。ただ、寺島さんとは違い、本心から笑うことはできなかった。

【次ページ】 日本ハムと話し合い

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