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「飯伏幸太の本質はロマンチスト」 新日本プロレス退団後、なぜ新興団体で国内復帰したのか? 41歳の哀愁も魅力、“型破りな天才”の現在 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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posted2023/10/28 11:04

「飯伏幸太の本質はロマンチスト」 新日本プロレス退団後、なぜ新興団体で国内復帰したのか? 41歳の哀愁も魅力、“型破りな天才”の現在<Number Web> photograph by GLEAT

GLEAT両国国技館大会の最終試合に登場した飯伏幸太

飯伏の本質は「お金に振り回されない人」

 飯伏のパブリックイメージは“華麗な空中殺法を使いこなすイケメンレスラー”もしくは“ハチャメチャな試合をする型破りな天才”というものだ。プロデビューしてから学生プロレスのリングに上がったり、日本武道館のスタンドからムーンサルトで飛んでみたりしながら、新日本では東京ドームのメインも張った。そんな飯伏の本質を、鈴木は「ロマンチスト」だと言う。

「お金は重視してもお金に振り回されない人ですね。自分にとって何が大事かを考えて、それが動く基準になっている。その大事なことが何かというと“業界のためになるかどうか”。目先のことではなく大きな枠組みで物事を考える人です。そういう意味でロマンチストですし、私が知っている中では長州力、前田日明、田村潔司といった人たちに似ているなと。考える内容の階層が深いんですよ。表面的なことは気にしていない」

 GLEAT両国大会での飯伏は、前日のファン公開記者会見を“無断欠席”している。マネジャー代わりの今成夢人からのLINEも既読にすらならない。実は扁桃炎で高熱を出し倒れていたという。以前も同じようなことがあった。格闘家にもよくあるのだが、ハードトレーニングの結果として免疫力が下がり、一時的に体調を崩してしまうのだ。それを乗り越えてから本格的に調子がよくなるというのが飯伏の持論。つまりGLEAT参戦にあたり、体調を崩すくらい練習で追い込んでいた。

 鈴木はと言えば、自分から飯伏に連絡をすることはなかった。

「飯伏さんが会見場に来ていないことは、選手にもスタッフにも伝えませんでした。不測の事態にどう反応するかも得難い経験になる。大会当日も体が動かなかったら、試合を中止するしかないと腹を括ってました。飯伏さんありきの試合ですから、代替選手を用意しても意味がない。

 でも結局、リングに立ちましたよね。入場してきた時の“来た!”という盛り上がり、解放感はとてつもなかった。やっぱりスーパースターだなと。それを迎え撃つGLEATの選手たちもいい顔をしてました。ゴジラが出てきたみたいな表情なんですよ。だけど、その圧倒的な存在にどうにか立ち向かおうとしていて」

「今の飯伏幸太は、哀愁も含めて魅力になっている」

 すべてを丸く収めて、みんなを納得させて飯伏はリングを降りた。これから、日本での飯伏の主戦場はGLEATになるのか。「今のところ、次の約束は何もしていません」と鈴木。

「飯伏さんの参戦も両国大会も予定はないです。飯伏さんが出るとしたら、また新たな大義がある時ですよね。飯伏幸太が闘うにふさわしい相手がGLEATから出てこないと。単に“今回負けたからリベンジしたい”では引っ張り出せないでしょう。私としては“社長、また両国でやりましょう。飯伏抜きで満員にしてやりますよ”と言ってくる所属選手が出てこないかなという期待もしてるんです」

 アメリカ・AEWではDDTの後輩である竹下幸之介とも対戦した飯伏。ファンも華麗で激しい闘いぶり以上に“何を残すか”に目を凝らす時なのだろう。両国大会での肉体は、全盛期ほどには絞り切れていなかった。それは鈴木も否定しない。

「映画のロッキーで言ったら『4~5』の段階ですかね。今41歳、思うように動けない部分もあるだろうし、そこに反発しながらどんな生き様を見せるか。40歳くらいになると人生の折り返し地点でもあって“残りの時間で何ができるのか”と考えるようになる。今の飯伏幸太は、哀愁も含めて魅力になっているなと」

 GLEAT両国大会は、団体だけでなく飯伏幸太自身も新たなフェイズに入ったことを示すものだったのだ。

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